UNMORAL

作:早川ふう / 所要時間25分 / 2:1

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2018.10.27.


【登場人物紹介】

ディラン
  若手ホープとの呼び声高い政治家。
  とはいえ、そこそこの年齢ではあるはずですがそこはあまり気にしなくてもいいかも。
  家に帰れば病床の妻を大切にする愛妻家。

ナタリー
  ディランの妻で、年は夫より3つ下。
  子供はいない。学生結婚後すぐに病に倒れた。
  政治家として歩む夫の負担になるまいとしている献身的な女性。

教授
  ディランの恩師。ディランが成立を目指している法案の軸となる研究をしている。

MC
  テレビ番組の司会者。教授との被り役。


【配役表】

ディラン ・・・
ナタリー ・・・
教授・MC・・・ 



ナタリー   料理をしていると、政治家である夫の出演番組が始まった。



MC    「本日は、上院議員のディラン・バーレー氏をお招きしています。
       お忙しい中ありがとうございます。
       早速ですが、ディラン氏が議会に提出された新法案について
       大変な騒ぎになっていますが」

ディラン  「そうですね。関心を持っていただけるのはありがたいと思っています」

MC    「反対の声も大きいですが、それについてはどうお考えで?」

ディラン  「もはや旧時代の道徳や倫理・価値観というものが通用しないところまできています。
       今は、そういう時代だということを、我々は認識しなければいけません。
       未来の為に頭を柔らかくするべきですね」

MC    「反対派は頭が固いと?」

ディラン  「ええ、そうですね。
       人類存続の危機が地球規模にまで拡大してしまったのは、他ならぬ我々人類の責任です。
       もっと言えば旧時代の道徳・倫理・価値観が、ここまでの状況にしてしまった。
       ならば、人類の未来の為に、我々が起こせる行動は何か!
       ……自ずと見えてくるのではないでしょうか」

MC    「成程。ここで、視聴者からの声をお伝えします。
       【みんな騙されるな。未来の為にと掲げる法案がこれとは笑わせる!
       この男こそ、人類に破滅をもたらすぞ】」

ディラン  「ははは、なかなかの石頭さんのようですね……」

MC    「罵詈雑言もなんのその。
       熱意と確信がなければこうはいきませんね。
       本日はディラン氏のお話をたっぷり一時間伺いたいと思います」


ナタリー   食料やエネルギーの枯渇、環境汚染、戦争……
       今や人類は、この地球で普通に暮らすということさえ、とても難しい。
       夫は、その厳しい現実から逃げずに、戦い続けている。




ディラン  「ただいま」

ナタリー  「おかえりなさい、ディラン。今日もお疲れ様」

ディラン  「どうしたんだナタリー……寝てなきゃダメだろう」

ナタリー  「今日は気分がいいのよ。こういう時くらいあなたに夕食を作ってあげたくて」

ディラン  「無理していないだろうね」

ナタリー  「ええ」

ディラン  「だったらいいんだが……」

ナタリー  「今日はシチューを作ったのよ」

ディラン  「いい匂いだね、さっきから腹の虫のオーケストラがうるさかったんだ」

ナタリー  「お肉もオーブンにあるの。
       今日は張り切っちゃった。
       ゆっくり食べる時間はある?」

ディラン  「勿論。手伝うよ、皿を運ぼうか」

ナタリー  「そんな、あなた疲れてるのに……」

ディラン  「遠慮しないで、早く食べたいだけなんだから」

ナタリー  「まぁ……ふふふ」

ディラン  「今日は食事もろくにとれなかったんだよ」

ナタリー  「頑張りすぎて倒れてしまったらどうするの……?」

ディラン  「そうならないように気をつけはするけどね。
       今推している法案が通れば、人類の未来の可能性が広がる。
       それまでは多少無理もしなきゃ」

ナタリー  「もう……私の気持ちなんて、ちっとも考えてくれないんだから」

ディラン  「僕のことを本当に考えてくれているのは君だけだって、ちゃんとわかっているよ。
       君がいなくなったら僕は生きていけない」

ナタリー  「本当?」

ディラン  「ああ。本当だとも。
       そういえば……先週教授のところでやった検査の結果、
       今日出たんじゃなかったのか?」

ナタリー  「あら覚えててくれたのね」

ディラン  「どんなに忙しくても、君のことを忘れたりするものか」

ナタリー  「嬉しいわ」

ディラン  「それで、どうだった……?」





教授    「お疲れ様ナタリー」

ナタリー  「ありがとうございました」

教授    「先週から検査検査で、疲れただろう」

ナタリー  「少しだけ」

教授    「無理はしなくていいよ。
       今日はこれでおしまいだから少し点滴をしようか。
       それで、検査結果と、これからの話をゆっくりしよう」

ナタリー  「ありがとうございます」

教授    「……にしても、今日はどこから点滴をいれようか……」

ナタリー  「ごめんなさい……」

教授    「いや、君が謝ることじゃないだろう」

ナタリー  「点滴跡がこんなにあると、自分でもキモチワルイって思っちゃうんです。
       きっと彼も、私の身体を見るとつらいんだわ……」

教授    「じゃあ、いい知らせになるね。
       先日の検査の結果、とてもよかった。
       今日診察した感じもCTも問題ない」

ナタリー  「まぁほんと!?」

教授    「体力も回復しているようだし、
       今まで使えなかった薬も、今の君になら使えるんだ」

ナタリー  「新しいお薬?
       また何十錠も飲むのはきついわ……」

教授    「今までは、身体への負担を減らすために更に薬が増えていたからね……。
       でもこれからは違う。
       朝昼夜、食後に3錠ずつだ」

ナタリー  「……私耳がおかしくなった!?」

教授    「次は耳の検査をしてあげようか? 必要ないと思うけどね」

ナタリー  「ねえ教授、本当にそれだけですむの……!?」

教授    「ああ。君の身体がよくなっている証拠なんだよ」

ナタリー  「これは夢かしら……。
       私、やっとあの人の重荷にならずにすむのね……!」

教授    「こらこら、そういう言い方をしては怒られるんじゃないのかね」

ナタリー  「そうね……あの人はとても繊細だから……」

教授    「“君を愛してる僕の気持ちを否定された気分になる”
       くらいは言いそうだ」

ナタリー  「さすがね教授。先週言われたわ」

教授    「はっはっは。
       そうだ、早速昼の分の薬を飲んでおくかね?」

ナタリー  「なんか胸がいっぱいで……。
       少しの水でも戻してしまいそう……おかしいわね私」

教授    「嬉しいニュースすぎて興奮してしまったかな。
       少し時間はかかるが、点滴にしておこう」

ナタリー  「すみません」

教授    「眠れるなら少し休むといいよ。
        一時間ほどかかるからね」

ナタリー  「はぁい。ありがとうございます」





ディラン  「教授も相変わらずだな。
       でも、結果がよくて安心したよ」

ナタリー  「私、これからもっと元気になれるのね」

ディラン  「元気になったらどこへ行きたい?」

ナタリー  「行きたいところはいくらでもあるわ。
       でも……。まずは普通を楽しみたいわ」

ディラン  「普通?」

ナタリー  「普通に、家を掃除してごはんを作って、あなたの帰りを待つの。
       週末はゆっくり過ごしたり、お買い物に出かけるのもいいわね。
       ……そんな普通がずっと夢だったんだもの」

ディラン  「そうだね……。愛してるよナタリー」

ナタリー  「私も愛してるわ。
       ……それでね、点滴中に少し眠れたのもあって、とても気分がよくなったのよ」

ディラン  「大変だ。教授のやつ、点滴にアルコールを混ぜたね!?」

ナタリー  「……もう、すぐそうやってからかう」

ディラン  「ごめんごめん」

ナタリー  「でも、それくらいハイになったわ。
       だって、もう治ってしまったんじゃないかって思うくらい身体が軽かったんですもの。
       だからお買い物して帰ってきて、こうやって料理も作れたのよ」

ディラン  「しかし、いきなり無理をするのは感心しないね」

ナタリー  「あら、あなただって人のコト言えないじゃない。
       無理ばーーーっかして」

ディラン  「言ったな?」

ナタリー  「ふふふ」

ディラン  「困った子だ」

ナタリー  「困った人」

ディラン  「ははは」

ナタリー  「ふふふ」

ディラン  「調子がいいからって、まだ完全に治ったわけじゃないんだからね?
       そこは忘れたらだめだよ?」

ナタリー  「はーい、わかってるわ。
       小言はここまでにして。お肉がかたくなっちゃう」

ディラン  「そうだね、食べよう」

ナタリー  「ええ。
       ……いただきます」

ディラン  「いただきます。
       ……うん、うまい」

ナタリー  「ほんと?」

ディラン  「ああ、うまいよ。ミシュラン三ツ星間違いなしだな」

ナタリー  「それは褒めすぎよ」

ディラン  「いやいや、このシチューの濃厚な深みは、一流シェフも脱帽さ」

ナタリー  「もう、政治家って口がうますぎるから嫌だわ」

ディラン  「うーん、君に僕の気持ちを信じてもらえないなら、政治家って仕事も考え直さないとな」

ナタリー  「またそういうことを。
       本気じゃないくせに」

ディラン  「君だって、だろ?」

ナタリー  「ふふ、まあね」

ディラン  「……本当は具合が悪いんじゃないのか?」

ナタリー  「どうして?」

ディラン  「……食が進んでいないようだから」

ナタリー  「この幸せを噛みしめていただけよ」

ディラン  「どうしたんだ……今日はやけに……」

ナタリー  「やけに、何?」

ディラン  「……いや。気のせいなら、いいんだが……」

ナタリー  「幸せなだけよ。……それがどうかした?」

ディラン  「……何でもないよ」

ナタリー  「変な人ね」

ディラン  「すまない、疲れてるんだきっと」

ナタリー  「……そういえば、料理をしながら夕方の番組を観たわ」

ディラン  「ああ、あれか。どうだった?」

ナタリー  「さすがよ。反対していた人もだいぶ賛成にまわっていたじゃない。
       時代はあなたの味方ね」

ディラン  「何としてもこの法案を通してみせるよ、未来の為にね」

ナタリー  「その未来に狙うのは大統領?」

ディラン  「君がファーストレディになりたいのなら、立候補を考えるよ」

ナタリー  「病気が治れば、あなたを支えられる。
       公務だってこなしてみせるわ」

ディラン  「じゃあこれは二人の夢かな?」

ナタリー  「ええ、私の夢を、あなたに賭けるわ」

ディラン  「そんな話をしたならここで乾杯したいところだけど……
       それは君の身体が治ったらにしておこう。
       ドレスアップして乾杯するのを楽しみにしてるよ」

ナタリー  「…………ええ」

ディラン  「……どうかしたかい?」

ナタリー  「……いえ、」

ディラン  「……顔色が悪いな」

ナタリー  「……だいじょうぶ、」

ディラン  「横になったほうがいい」

ナタリー  「まって、」

ディラン  「……動けるかい」

ナタリー  「……っ……はっ、……はぁ、はぁ……くるし、」

ディラン  「……脈が不安定だね」

ナタリー  「うっ、ううっ……」

ディラン  「頓服はどこに?」

ナタリー  「……カウンターに、……うっ……」

ディラン  「大丈夫、大丈夫だから。
       気をしっかりもちなさい。
       今救急車も手配する」

ナタリー  「ごめ、なさ……」

ディラン  「水は飲めるかい。さあ薬を。
       楽な体勢をとって」

ナタリー  「む、り……」

ディラン  「大丈夫だ、すぐよくなる」

ナタリー  「……やっぱり私、よくなんてならないのね……
       薬が減ったとしても、私はあなたの迷惑にしかならない……っ」

ディラン  「自暴自棄になるのはやめるんだ!」

ナタリー  「……こんな私なんていらないじゃない……!!」

ディラン  「僕を怒らせたいのか!」

ナタリー  「嘘つき!!!」

ディラン  「ナタリー!」

ナタリー  「……嘘、つき……う、……」

ディラン  「ほら、深呼吸だ。……無理をしすぎた君が悪い。
       これに懲りて、馬鹿なことを言う前に、きちんと身体を休ませなさい」

ナタリー  「はぁ……はぁ……」

ディラン  「……うん、脈も安定してきたね」

ナタリー  「……」

ディラン  「……ナタリー」

ナタリー  「……嘘つき」

ディラン  「……ナタリー?」

ナタリー  「……うそつき」

ディラン  「嘘なんかじゃない。
       君の病気はもうすぐよくなって、ずっと僕と一緒にいられる。本当だ」

ナタリー  「ウソツキ」

ディラン  「僕をあまり不愉快にさせるなら、君の喉をつぶさなければいけなくなるよ」

ナタリー  「ウソツキウソツキウソツキウソツキ」

ディラン  「………………残念だ。僕は君の声がとても好きだったんだが……」

ナタリー  「……ウソツキ」

ディラン  「……さて困ったな。
       えーと、携帯は……っと……教授、教授……(携帯を操作しながら)」



教授    『やあ、ディラン』

ディラン  「教授、ナタリーが倒れたよ」

教授    『そうか……予想よりも遅かったな』

ディラン  「予測ではもっと早かった?」

教授    『ああ、かなりの劇薬だからね」

ディラン  「検査の結果は【良好】だと聞いたが……」

教授    『ああ、病巣は全身に広がっていた。
       心臓が止まるのも時間の問題だったよ」

ディラン  「じゃあ、適用条件には、あてはまったわけだね?」

教授    『うむ。
       あとで診断書のPDFを送っておこう。
       これも議会に提出するんだろう?』

ディラン  「ええ、助かります」

教授    『それで、ナタリーの様子はどうだね?』

ディラン  「それが、ウソツキ、と繰り返すばかりで……」

教授    『はぁ……ナタリーの最期に何を言ったんだ?』

ディラン  「何もおかしなことは言わなかったんだけどなあ……」

教授    『どうかな。君は政治家のくせに詰めが甘いところがある。
       足元を掬われないようにしなさい』

ディラン  「肝に銘じておくよ。
       それで教授、このナタリーの状態の説明を」

教授    『新薬Z−02B(ゼットゼロツービー)は、
       知っての通り、あらゆる病魔をねじ伏せることのできる特効薬だ」

ディラン  「ナタリーは今後、肉体に強い損傷を与えない限りは生き続けるんだろう?」

教授    『ああ。理論上、150年の耐久性はあるよ』

ディラン  「……夢のようだ。
       僕達は、人類の希望となるんだよ、ナタリー」

ナタリー  「ウソツキ」

ディラン  「これだ。この一言だけを繰り返すなんて、何か薬に欠陥でもあるんじゃないのか?
       隠していると為にならないぞ」

教授    『この私を脅す気かね』

ディラン  「まさか、そんなわけはないだろう。
       真実を話せと言っているだけだ」

教授    『薬の副作用は、患者の脳の大破と、身体の組織の劇的再構築……それだけだ』

ディラン  「ではこの状態は!?」

教授    『ある種の遺言、ダイイングメッセージかもしれん』

ディラン  「ハッ、冗談が過ぎる」

教授    『これは推測だが、よほど、君にそう伝えたかったんだろう。
       その言葉を強く焼き付けたまま、彼女は変わった。
       故に、そう繰り返す彼女ができあがってしまった』

ディラン  「……では、彼女はこれからずっと、このままなのか!?」

教授    『いや、命令は聞くはずだ』

ディラン  「命令か……シミュレーションしてあるとはいえ、
       いざやるとなると緊張するが……」

教授    『これがテストケースだ。
       気楽にやりたまえ』

ディラン  「データを取りつつ気楽にとは無茶を言う」

教授    『卒論のようなものさ、しっかり気楽に提出を頼むよ』

ディラン  「はぁ……。
       ハロー、ナタリー。
       君の名前はナタリーだよ。
       僕はディラン、君の主人だ」

ナタリー  「ウソツキ」

ディラン  「……ナタリー、命令だよ、僕を愛してると言いなさい」

ナタリー  「あいしてる」

ディラン  「おお、うまくいった」

ナタリー  「ウソツキ」

ディラン  「っ……」

教授    『はっはっはっ、まるでコメディーだな!』

ナタリー  「ウソツキウソツキ」

ディラン  「……ナタリー、命令だよ、黙っていなさい」

ナタリー  「ウソツキ」

ディラン  「ナタリー、命令だ、黙れ」

ナタリー  「……」

ディラン  「まいったね。
       これから彼女を調教していかなければいけないのか」

教授    『なぁに。時間はたっぷりあるんだ、気長にやろうじゃないか』

ディラン  「そうだね」

教授    『それで?
       今からナタリーを連れてこれるのかね?』

ディラン  「病院に、ではなさそうだな。
       研究所まで? ここから車で何時間かかると思ってる」

教授    『ベッドは用意してあるよ。
       これも未来の為だ、今すぐ来なさい』

ディラン  「はいはい、わかりましたよ。それじゃあまた」

ナタリー  「……」

ディラン  「ナタリー。僕たち二人の夢を叶えよう。
       君を必ずファーストレディにしてあげる」






ナタリー   料理をしていると、政治家である夫の出演番組が始まった。


ディラン  「人類がこの地球で暮らすということさえ、
       今や普通にはできなくなっているんです。
       この法案で、食料問題・医療・社会保障も含め、様々な問題が一気に解決されます。
       旧時代の道徳や倫理・価値観というものを捨てなければ、我々に未来はないのです」


ナタリー   年輩のコメンテーターは、渋い顔をしている。
       夫を援護するように、教授が話し始めた。


教授    「ありとあらゆる資源が枯渇している現状をどう解決するか。
       どなたでも構いません。代替案があるならぜひ出していただきたい。
       ディラン氏が提唱する【人類再生資源法案】を、ゾンビ法案、などと揶揄する前にね。
       確かに再生された彼らは、いわゆるゾンビかもしれません。
       しかし、もう高額な医療費もかかりませんし、食事をとる必要もない。
       本人が苦しみから解き放たれ、且つ、仕事をすることも可能だ。
       介護されていた者が一転、人類の未来の為に働くことができるというのは、
       画期的だとは思いませんか?」

ディラン  「もちろん、抵抗のある方が多くいることもわかっています。
       少数派を多数派にする為に、僕は根気よく訴えていきますよ」

教授    「これを、ひとつの尊厳死の形だと認識していただきたいですね。
       人類の歴史上、尊厳死を認めた国は数多くありましたし、我が国も同様です。
       ただ、この【人類再生資源法案】は、そのあとがある、というだけなんです。
       それに、彼ら……あなた方のいうゾンビとなった者たちは、疲れを知りません。
       人間よりも優れた寿命を持ち、ありとあらゆる病魔にも打ち勝ちます。
       労働力の確保は、社会の発展を意味することでしょう。
       危険性などというのは、映画の影響でしょうが、
       あくまであれはエンターテイメントですよ、現実とは違います。
       安全性は、確認できているんですからね」

ディラン  「そうです。被験者の第一号は、皆様が一番よくご存知でしょう?
       私が今ここにいるということが、安全性の何よりの証ですよ、はっはっは」





ナタリー   夫は、大統領となり、私はファーストレディの夢を叶えた。
       夫は私の誇りだ。


教授     「忘れてはいけません。
        この地球上で、人類だけが特別な存在ではないのです」

ディラン   「ええ、その通り。僕たちは地球に存在する、多くの生き物の中のひとつにすぎません。
        人類とは、最も効率、効果的な『資源』である、
        これは、決して突飛な価値観なんかではありませんよ」


ナタリー   「…………ウソツキ」






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