その後どうした 鈴木くんと鈴木さん

作:早川ふう / 所要時間 25分 / 比率 2:0

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2016.08.01.


【登場人物紹介】

タケシ
  26歳。社会人4年目。勤務先が変わったのを機に一人暮らしを始めることに。
  実家では何も手伝いなどしたことはなく、家事は一切出来ない。
  なんとかなる、と家を出てきたポジティブ馬鹿。

ツヨシ
  23歳。大学院生。大学入学を機に一人暮らしを始めている。
  家事はそこらの主婦にひけをとらない。几帳面。
  笑顔の裏にネガティブな自分を隠しているが、実は積極的なタイプ。


【配役表】

タケシ・・・
ツヨシ・・・



タケシ   「ツーーヨシ!」

ツヨシ   「わっ……びっくりした」

タケシ   「ひひ、今帰りか?
       てか今日どうしてそんなにいっぱい買い込んでんだよ。
       袋よこせよ持つから」

ツヨシ   「タケシさん、仕事で疲れてるんだから僕が持ちます」

タケシ   「いやー実は今日疲れてないから大丈夫なんだよっ。
       だってこの時間に帰ってこれてるんだし!」

ツヨシ   「そうですよね、珍しい」

タケシ   「だからほら、持つー」

ツヨシ   「ありがと」

タケシ   「今日夜何にするつもりだったんだ?」

ツヨシ   「カレー作ろうかと……。
       あまり煮込まないでも作れる簡単なやつだけど」

タケシ   「おっいいねいいね、ビールと一緒にかっこみてえ!!」

ツヨシ   「夏野菜カレーだから、ビールもすすみそう」

タケシ   「おっそうなのか?」

ツヨシ   「ほら、ナスとオクラとズッキーニ、トマトもたっぷり」

タケシ   「なるほど、それでこんなに買ったのかー」

ツヨシ   「野菜が安かったってのもあるんだけど、
       余ったらラタトゥイユ作ればいいかなと思って、
       いっぱい買っちゃって」

タケシ   「……ほんっと、ツヨシってすげぇな」

ツヨシ   「え?」

タケシ   「だって、こう……仲良くなるきっかけだって、アレだったろ?」

ツヨシ   「タケシさんが不摂生してぶっ倒れたアレね」

タケシ   「あれからさ、ずっとメシ作ってくれてるじゃん。
       ……俺、お世辞じゃなくてマジで、
       お袋のメシより、ツヨシのメシの方が好きなんだよ」

ツヨシ   「えっ」 

タケシ   「……うちのお袋、過保護のくせに俺の好みなんかまる無視すっから。
       カレーなんてバーモントの甘口一択なんだよね。
       お袋辛いのキライだからさ。
       でも、……ツヨシは、俺の好みとか聞いてくれるし、
       苦手だったもんとかも食えるようになったし、
       ……ぁあッお袋みたいだって意味じゃねえぞ!?
       むしろ例えるなら嫁さん……うっそれもマズイか……?」

ツヨシ   「タケシさんの帰りを待ちながら料理を作るのって楽しいよ。
       タケシさんは何でも美味しい美味しいって食べてくれるし、
       リアクションが素直だから、作り甲斐があるし。
       自分ひとりの為に料理するのってどうしても面倒だけど、
       一緒に食べるなら、タケシさんが美味しいって言ってくれる顔見るためなら、
       いくらでも頑張って作ります」

タケシ   「……なんだよ。……くそう、可愛いな」

ツヨシ   「タケシさんが……僕を大事にしてくれるから……
       だから僕だってタケシさんのために色々したくなるんです」

タケシ   「そ、そっか……。
       大事にできてるなら、よかった」

ツヨシ   「……ほんとは、男の恋人なんて、欲しくなかったでしょう?」

タケシ   「えっ」

ツヨシ   「それでも僕を受け入れてくれたし……
       そばにいてほしいって、言ってくれる。
       ……僕を、選んで、大切にしてくれてる……
       僕幸せです」

タケシ   「……うん」

ツヨシ   「……で。
       何を不安がってるんですか?」

タケシ   「いいいっ!??!?!」

ツヨシ   「タケシさん何でも顔に出ますから。
       すーぐわかります。
       何かあったんですか?
       どうせ今日の仕事も早退したとかそういうのじゃないんですか?」

タケシ   「まぁ……午後休もらった」

ツヨシ   「……何か用事でも?」

タケシ   「……えーと……その……」

ツヨシ   「……どうしたんです?」

タケシ   「こ、こんな外で言える話じゃないっていうかなんていうか」

ツヨシ   「家だったらゆっくり話せる?」

タケシ   「いや、えっと、その、むしろゆっくりする話でもないっていうか……」

ツヨシ   「もうっ一体どうしたんですか!?」

タケシ   「……その……。
       俺は……わかんねーから。
       未だに、男同士でどうやって恋愛すんのかとか。
       お前が今まで抱えてきたものとか、想像すらできねえ」

ツヨシ   「そりゃそうでしょう」

タケシ   「……今だって。
       ずっと……我慢させてる、だろ?」

ツヨシ   「え?」

タケシ   「……俺が、わかんねーから」

ツヨシ   「……何の話ですか?」

タケシ   「……だ、だから……えっと……その……。
       とにかくあれだっ。
       こ、これっ……この袋のなか! 見ろ!」

ツヨシ   「え?」

タケシ   「持ってる荷物全部よこせ!! 俺が持つ!!!」

ツヨシ   「えっえっ」

タケシ   「……それで足りるのか、わかんねぇけど……
       とにかく……その……うん……」

ツヨシ   「……これ、もしかして……うわ……
       タケシさん、どうしたんですかこれ!!」

タケシ   「……二丁目に行って、とりあえず喫茶店入ったら、
       フレンドリーなやつがいて友達になってさ。
       そいつに色々教えてもらったんだ」

ツヨシ   「フ、フレンドリーなって……二丁目って……!!
       ちょっとタケシさん大丈夫でしたか!? 
       誰かに連れ込まれたりとか、悪戯されたりとか!!」

タケシ   「は!? あるわけないだろそんなん」

ツヨシ   「……いや、だって……えーーー……」

タケシ   「まぁ、色々話して、お前のこととかも相談してさ。
       そしたらそいつがこういうの売ってる店を紹介してくれて、
       色々見繕ってくれたんだ。
       ……まぁ……俺の覚悟っていうか、なんていうか……」

ツヨシ   「……ほんと、危ない目にあわなくてよかった」

タケシ   「なんでだよ」

ツヨシ   「使い方を教えてあげる、とかって連れ込まれてヤられるなんて、
       結構よくある話なんです!!
       もーー……自覚しろって言ってもわからないかもしれませんけど……」

タケシ   「でもそいついいやつだったし」

ツヨシ   「ヤるためだったらいい顔のひとつやふたつします。
       女を口説くときにそういうふうにする男いるでしょう?
       男口説くときだって一緒なんです!
       危ないやつなんていくらでもいるんですから!!」

タケシ   「……そ、そうか。ゴメン」

ツヨシ   「……とりあえず、タケシさんの気持ちは嬉しいですし、
       無事だったからよしとしますけど……」

タケシ   「お、おう……」

ツヨシ   「ちなみに」

タケシ   「ん?」

ツヨシ   「……どっちをするつもりだったんです?」

タケシ   「え?」

ツヨシ   「だから、えっと、挿れる方と、挿れられる方。
       男役か女役かって言った方がわかりやすいですか?」

タケシ   「……あ!
       ……それも決めるものなのか!!」

ツヨシ   「……どうするつもりだったんですか?」

タケシ   「いや、順番にやるものなのかなあとか思ってた」

ツヨシ   「……まぁそういうカップルもいないわけではないでしょうけど……」

タケシ   「ごめん、ほんとなんにも知らなくて。
       ……知り合ったやつもさ、彼氏大変だよきっととか言ってた……」

ツヨシ   「それで少し不安そうな顔してたんですね」

タケシ   「まぁ。うん。
       だって同じ男だし、……好きなヤツとヤりたいって思うのは本能だろ。
       ……それを我慢させてんのは……さ……」

ツヨシ   「……これからゆっくり教えますよ、いっぱい色々買ってきてくれたことだし」

タケシ   「面倒だろ? ごめんな……」

ツヨシ   「あなたが好きなんです。
       ……だからいいんです。
       どれだけ面倒でも、どれだけ我慢させられても。
       僕がほしいのはタケシさんだけなんだから」

タケシ   「……ツヨシ……」

ツヨシ   「……へへ。
       とりあえず、今夜カレーを食べたら、ちょっとしてみましょうか」

タケシ   「お、おう……!
       頑張る!!」

ツヨシ   「……頑張りすぎなくていいんですよ。
       僕は今でじゅうぶん幸せなんだから。
       ゆっくりでいいんです。
       だってずっと一緒にいてくれるんでしょう?」

タケシ   「もちろん」

ツヨシ   「大好きです、タケシさん」

タケシ   「……俺も、大好き、だよ」








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