白と黒の additional time

作:早川ふう / 所要時間 30分 / 比率 2:0

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2011.10.26.


【登場人物紹介】

タクマ
  鬼畜系ツンデレな攻
  不動産関連業の若き社長、父親は親会社の社長
  高級男娼館で遊んだ折、客としてきていたアキラの顔を覚えていた

アキラ
  気弱な受
  政治家の息子、将来は跡を継げと言われて反発するも逆らえない
  高級男娼館で遊んで気を紛らわすのは、失恋という理由もあった


【配役表】

タクマ・・・
アキラ・・・



(政治家や企業家の集まるパーティー会場)

タクマ   「よぉ! 珍しいところで会ったなぁ」

アキラ   「……え?」

タクマ   「俺、記憶力はいい方なんだよ」

アキラ   「どこかで、お会いしましたっけ?」

タクマ   「お前、あの店にいただろう?」

アキラ   「あの店??」

タクマ   「あの店の客にしては若すぎて浮いてたし、
       顔も好みだったから覚えてたんだ」

アキラ   「何の話ですか?」

タクマ   「なかなかないよな、アッチ専門ってのはよ」

アキラ   「えっ……」

タクマ   「あの店は潰れたんだか移転したんだかはわからねぇけど。
       しかしありゃあ非合法だったよなあ」

アキラ   「あの店ってまさか……!」

タクマ   「まずいんじゃねぇのか?
       代議士の息子が、あんな店に通ってたなんて世間に知れたら」

アキラ   「もともと、父の紹介だから、別に、僕は……」

タクマ   「ってことは親父さんが違法な店に便宜を図ってた?
       こりゃいいネタだ、高く売れるぜ」

アキラ   「そんなっ……」

タクマ   「しかしお前もゆくゆくは政治家になるんだろう?
       こんな趣味してるようじゃ、先が知れるよなあ。
       親父さんもがっかりしてるんじゃねぇのか」

アキラ   「……そうかもしれませんね。
       あの店だけで遊ぶようにと、僕に言うくらいには、
       もう面倒ごとを起こされたくないみたいですし」

タクマ   「過保護だな」

アキラ   「ええ」

タクマ   「ま、それもお前を見てると過ぎた心配じゃあなさそうだ。
       無防備すぎる」

アキラ   「え?」

タクマ   「言葉選びが絶望的にへたくそだ。
       隠しておきたいことを隠せない、政治家には向かねえ」

アキラ   「政治家になりたいわけじゃ、ないですから」

タクマ   「だろうな。
       面倒ごとを起こして、親父さんの迷惑になったことがあって?
       カムアウトもしようとしてしたわけじゃなく、なし崩し的に。……違うか?」

アキラ   「どうして…………!?」

タクマ   「お前の様子と口ぶりで、な。
       無防備すぎて、こりゃ親父さんも気が気じゃないだろうよ。
       違法営業の店をバックアップして、息子を放り込むのも、
       そっちの方が自分が安全だって思ったのかもしれねえ」

アキラ   「……っ」

タクマ   「お前も、政治家になりたいわけじゃないのに、こうしてこういう集まりに顔を出してる。
       親父さんには逆らえない、か」

アキラ   「……あの人の言うことなんか聞きたくないけど、でもっ……」

タクマ   「たいした坊っちゃんだな」

アキラ   「……」

タクマ   「その目……いいねぇ」

アキラ   「は?」

タクマ   「気に入った」

アキラ   「え……」

タクマ   「せっかく同じ趣味なんだ、いいだろう?」

アキラ   「いいって何が……」

タクマ   「ほら」

アキラ   「わっ……引っ張らないで下さい!
       どこ行くんですか!? 僕まだここにいないと!」

タクマ   「ここで騒いで、また親父さんに迷惑かけるようなことになりてえか?」

アキラ   「……っ!!」

タクマ   「さっさと来い」



アキラ    引きずられるようにして連れてこられたのは、トイレの個室。
       これから何が起こるかなんて、簡単に想像がついた。



タクマ   「おあつらえむきに誰もいねぇな」

アキラ   「こんなとこで……本気ですか!?」

タクマ   「俺に目をつけられたのが運のツキだよ」

アキラ   「ちょっ、どこ触って……!!!」

タクマ   「騒ぐなよ、人が来るぜ? それともその方が興奮すんのか?」

アキラ   「……っ!! ぁ、んっ……ひっ!」

タクマ   「そうやっておとなしくしとけばいいんだよ」

アキラ   「ゃ、やめ……あぁ……んっ、んっっ……ふ、ぅ、……っん」

タクマ   「ずいぶん感じやすいんだなあ?」

アキラ   「や、ぁっ……」

タクマ   「もう下着まで濡らしてる。ククッ……先走りが溢れてるのわかるか?」

アキラ   「あ……ぁう、んっ、んっん……ふっぁ……んっ」

タクマ   「(愛撫しながら口づけて)んっ……ふ、……ぅん……」

アキラ   「はっ、……ぁん、ぅう……」

タクマ   「(唇を離して)ずいぶんとがっついてきやがる」

アキラ   「や、ぁ……ちが、う……」

タクマ   「あんだけ舌絡ませてきて、どこが違うんだよ」

アキラ   「あっあんっ、そんなっ、だめ、だめっ」

タクマ   「そーゆーのなんて言うか教えてやるよ」

アキラ   「……ア……だめっ、あぁ……やだっぁんっ……」

タクマ   「淫乱!」

アキラ   「ああァぁああッッ……!!!」  

(間)

アキラ   「はぁ……はぁ……」

(携帯電話のカメラの撮影音がする)

アキラ   「えっ……」

タクマ   「記念写真、可愛く撮れたぜ?」

アキラ   「なっ……!?」

タクマ   「画質がいいからなあ。
       俺の跡も、俺たちが出したモンまで、しっかり写ってるよ」

アキラ   「消してください!!」

タクマ   「俺の言うことを聞いてりゃ、この写真が日の目を見ることはねえよ」

アキラ   「最初から脅迫するつもりで……?」

タクマ   「だから最初に言ったろ?
       俺に目をつけられたのが運のツキってな」

アキラ   「……いくら、渡せば……」

タクマ   「金なんかいらねぇよ。俺だってそこそこ稼いでんだ」

アキラ   「じゃあどうすれば」

タクマ   「わかんねえのか? ……身体だよ」

アキラ   「身体!?」

タクマ   「悪い話じゃないと思うぜ?
       身体の相性もよかったじゃねぇか」

アキラ   「それは……」

タクマ   「飽きたら開放してやるよ。
       それまでは、俺が連絡したら必ず来い」

アキラ   「………」

タクマ   「返事は?」

アキラ   「わかりました」

タクマ   「出せ」

アキラ   「え?」

タクマ   「携帯」

アキラ   「あ、はい……」

タクマ   「既読無視しやがったら……わかってんな?」

アキラ   「はい……」

タクマ   「じゃあな」(出て行く)


アキラ    身体を拭いて、服を整えて。
       そして改めて携帯に登録された名前をみて、愕然とする。
       ……タクマ、っていうのか、あいつ。
       あいつも、タクマなのか……。

(間)

アキラ    確かに脅されて始まった関係だった。



タクマ   「声出せよ、ほら喘げ!!」

アキラ   「あっああっ、んっ、やっ、だめっ!
       イくっイっちゃ……んぁあっ!!!」

タクマ   「……相変わらず感じやすいなお前は」

アキラ   「はぁ……はぁ……ぁ、んッうぅ……」

タクマ   「なんだよ、もっと欲しいのか?」

アキラ   「あんっ……ゃ、いま、動いたらっ」

タクマ   「いま動いたら? なんだよ?」

アキラ   「ンんっ……!」

タクマ   「ほら、言ってみろよ」

アキラ   「あっ ぁ、ふっ、ぅうん……」

タクマ   「どうしてほしい? お願いしてみろよ」

アキラ   「……もっと、もっと奥を、突いて、くださいっ」

タクマ   「ほんっとどうしようもない淫乱、だなッ」

アキラ   「アっ、だめっ、そこ、そこッ……んンっ ア、ああぁぁあああッ!!!」

タクマ   「くっ………!! んっ……」



アキラ    でも、することさえしてしまえば、
       それ以外を要求されることはなかった。



タクマ   「おい。……おい! 起きろ」

アキラ   「ん……?」

タクマ   「シャワー使っとけよ。中出しした分、かき出しとかねぇと下痢するぞ」

アキラ   「あ、はい……」

タクマ   「俺がシてやろうか?」

アキラ   「じ、自分でできますっ」



アキラ    むしろ、変に優しい、かもしれない。
       横暴だったり、怖いときもあるのに。変なカンジだった。



タクマ   「お前、シてるときに俺の名前呼ばねぇよなぁ?」

アキラ   「あっ、はい……。あ、えと、呼んだ方がいいですか?」

タクマ   「別に。好きにすりゃいいさ」

アキラ   「はぁ」

タクマ   「さっき、寝ながら俺の名前呼んでたから気になっただけだし」

アキラ   「えっ……」

タクマ   「まさか俺の夢ってわけじゃないだろ?
       好きな男か? タクマなんてありふれた名前だしなぁ」

アキラ   「……夢なんて、みてないです」

タクマ   「ふーん……?」

アキラ   「……たしかに、前好きだったひとも、同じ名前、でしたけど」

タクマ   「相手はノンケか?」

アキラ   「ええ」

タクマ   「まぁ、よくある話だな」

アキラ   「同級生だったんですけど……僕も馬鹿で。
       好きだからってすぐ告白しちゃったんですよね」

タクマ   「若いな」

アキラ   「……ほんと、考えが足りませんでした」

タクマ   「それが前言ってた“面倒ごと”か?」

アキラ   「はい…。あの時は散々でしたよ。
       気持ち悪がられて、周囲にも言いふらされて……」

タクマ   「白い目で見られたか」

アキラ   「学校にいられなくなってしまったので、
       父にはひどく怒られました」

タクマ   「ああ、それでなし崩し的にカムアウトか」

アキラ   「ですね」

タクマ   「立場的に体裁も気にするだろうしな」

アキラ   「はい。……あの店、父の紹介って言ったの、覚えてますか?」

タクマ   「ああ」

アキラ   「あれ本当は、女性と付き合えるようになってこい、っていう命令だったんですよ」

タクマ   「ずいぶんと短絡的だな」

アキラ   「それであの店に通ってて、仲のいい女性もできたんですが、
       親友にしかなれなくて」

タクマ   「性的嗜好はどうしようもねぇよ」

アキラ   「それを見かねたオーナーが、
       父に内緒で裏を紹介してくれたんです」

タクマ   「ああ、それだったのか」

アキラ   「はい。でもあの店が閉まってからはどうしようもなくて。
       かといって、簡単に相手も見つけられないし……」

タクマ   「なるほど。
       俺からの提案は、お前にとっても都合がよかったと?」

アキラ   「……いえ、そうは、言ってないですケド……」

タクマ   「ふっ、まぁ、お互い飽きるまで楽しめばいいさ」

アキラ   「楽しむって言っても……」

タクマ   「……?
       ああ……、脅迫なんて本気じゃねぇよ」

アキラ   「え?!」

タクマ   「そんな面倒な事誰がするか」

アキラ   「だって……、じゃあなんで?」

タクマ   「アホ。そんなことは自分で考えろ」

アキラ   「…………」

タクマ   「いい季節になったし、今度ドライブでも行くか。少し遠出して、メシでも食おう」

アキラ   「……は、はい」

タクマ   「何か食いたいもん、考えとけよ」



アキラ    そんなこと言われたら、もしかして、僕のことを……なんて、
       舞い上がってしまった僕は、単純なんだろうか?
       付き合ってるわけでもないのに、
       それからの日々はまるで恋人同士みたいで、楽しかったから。
       だから。
       余計、ショックだった。



タクマ   「お前ともそろそろ1年たつな」

アキラ   「そうですね」

タクマ   「俺にしては、長くもった方か……」

アキラ   「え??」

タクマ   「そろそろお前で遊ぶのも終わりだ」

アキラ   「終わりって……!?」

タクマ   「飽きたんだよ。1年も遊んだしな」

アキラ   「そんな……」

タクマ   「……(煙草に火をつけ吸い始める)ふー……」

アキラ   「……他に好きな人とか、できたんですか」

タクマ   「まぁ、新しい玩具は見つけたな」

アキラ   「もう、僕とは……終わり、ってことですか」

タクマ   「ああ。……お前はもういらねえよ」

アキラ   「っ……!!」

タクマ   「今度、取引先の社長の娘と結婚する。
       だから他の男じゃ満足できねぇって、すがりついてこられても迷惑だ。
       ……どうせお前も、そのうち結婚はするだろ。
       ここらが潮時だ」

アキラ   「……いやだ……」

タクマ   「あ?」

アキラ   「……好きなのに! あなたのことが好きなのに!!」

タクマ   「……、お前……」

アキラ   「あっ……、僕……その……」

タクマ   「……あのなぁ。
       男同士なんてもんは、気の合うやつと、軽く遊ぶのが一番なんだよ。
       恋愛ごっこはよそでやれ」

アキラ   「……っ!!!!」

タクマ   「もう連絡しねえ。そっちもしてくるんじゃねえぞ」



アキラ    さよならも、言えなかったし、言われなかった。
       最初から始まってもいなかったんだから、アタリマエなんだけど。
       でも、こんなのってない。
       遊ばれたんだ……。
       うぅん、遊びだってことを忘れた僕がいけなかったのかな。
       終わるって思った瞬間に、いきなり口から出た『好き』の言葉。
       自分でもびっくりした。
       でも、自覚したとたんに失恋なんて……。
       恋なんて、するもんじゃない。
       タクマ、なんて名前の人間には、特に……。

(間)

アキラ    それから数年の時が流れた。

(住宅街。ボロアパートへ続く薄暗い道を歩いてくるタクマ)

タクマ   「あー疲れたなぁ……。あっ米きれてたっけ……。
       明後日までは金ねぇし、メシどうすっか……っと、鍵、鍵はっと……ん?」

アキラ   「お帰りなさい。……久しぶり、ですね」

タクマ   「お前……」

アキラ   「急に消えちゃうなんて、ひどいじゃないですか。
       結婚する、なんて嘘までついて」

タクマ   「連絡すんなっつったよな」

アキラ   「連絡なんて、一回もしてないじゃないですか。
       約束はやぶってないです」

タクマ   「ちっ……、どうしてここがわかった?」

アキラ   「もちろん、探したからです」

タクマ   「心配しなくても、あの写真はとっくに削除してあるよ」

アキラ   「そんなこと、心配してません。
       あなたが言ったんですよ、脅迫なんて本気じゃなかったって」

タクマ   「……とにかく帰ってくれ」

アキラ   「お話があるんです」

タクマ   「俺にはない。とっとと帰れ」

アキラ   「いやです」

タクマ   「帰れ!」

アキラ   「いやです!」

タクマ   「帰れ!!」

アキラ   「いやです!!」

タクマ   「帰れっつってんだよ!!!」

アキラ   「話を聞いてくれるまで帰りません!!!」

タクマ   「はぁ……。……疲れてんだよこっちはっ」

アキラ   「お時間とらせませんから」

タクマ   「……ったく。なんだっつーんだよ」

アキラ   「今日は、僕の父がしたことを、謝りに来ました」

タクマ   「あ?!」

アキラ   「社長だったあなたが、今こんな不自由な生活をされてるのは、
       あのとき、僕の父が……」

タクマ   「ストップ! お前、何か勘違いしてねえか?」

アキラ   「え?」

タクマ   「確かに、お前の親父さんが作った法律の影響で融資は縮小され、
       俺の会社も親父の会社も痛かったさ。
       けど、親父の会社が潰れたのは親父の責任だ」

アキラ   「でも、あなたのお父様はお亡くなりになったじゃないですか、過労死で」

タクマ   「そのおかげで保険金が降りた。
       遺産と俺の会社を売った金で、借金もほぼ返し終わってる。
       これも運命ってやつだと思えば、どうってことねぇ」

アキラ   「じゃあ、なんで今まともな仕事に就いてないんですか?
       朝から晩までバイトをかけもちされてますよね?」

タクマ   「……それは……」

アキラ   「再就職、できなかったんですよね?」

タクマ   「どこも不景気だからな」

アキラ   「わかってるんじゃないんですか?」

タクマ   「何がだ」

アキラ   「僕の父のせいだって」

タクマ   「……知らねぇよ」

アキラ   「……やっぱり、わかってたんですね」

タクマ   「……なんだよ。しばらく会わねぇうちに、政治家らしくなったな」

アキラ   「ありがとうございます」

タクマ   「……」

アキラ   「僕を怒らせようとしても無駄ですよ。
       僕は今日、謝りに来たんですからね」

タクマ   「……ったく」

アキラ   「父のしたことは最低です。
       反吐が出るほど陰険だ」

タクマ   「違ぇよ」

アキラ   「え?」

タクマ   「親父さんがそこまでする理由がちゃんとあるんだよ」

アキラ   「……どういうことですか」

タクマ   「俺の親父が、お前との関係をどこかで知ったらしくてな。
       あの野郎、お前の親父さんを、強請ってたんだよ」

アキラ   「……強請ってた?!」

タクマ   「たまたまその電話してるところを聞いちまってな。
       だからすぐにお前から離れたんだ」

アキラ   「……え…………」

タクマ   「勘違いすんなよ。言っただろ? 面倒ごとは嫌いなんだ」

アキラ   「で、でも」

タクマ   「親父のことは自業自得だと思ってる。
       息子のことより、自分や会社の得を考えるようなクソだったからな。
       俺は死んでくれてせいせいしてるし、
       お前の親父さんが、未だに俺を排除しようとしてんのも、
       お前を大事に思ってこそだ。少し羨ましいよ」

アキラ   「……ごめんなさい。僕ほんとに何も知らなかったんですね」

タクマ   「こっちこそ、迷惑かけて悪かった。
       ……これで用は済んだろ? さぁ帰ってくれ」

アキラ   「いえ、まだ用は終わってませんから」

タクマ   「謝るだけじゃねぇのかよ」

アキラ   「今……恋人はいらっしゃるんですか?」

タクマ   「んなもん作る暇ねえよ」

アキラ   「よかった。じゃあ、僕を恋人にしてください」

タクマ   「はぁ!?」

アキラ   「僕、言ったじゃないですか。別れる時に。
       ……忘れちゃいましたか?」

タクマ   「……いや、」



アキラ   『……好きなのに! あなたのことが好きなのに!!』



タクマ   「覚えてる、けど」

アキラ   「遊ばれたんだから、自分が馬鹿だったんだから、って
       何度も自分に言い聞かせて、忘れようとしました。
       でも、どうしても忘れられませんでした。
       今でも、気持ちは変わってないんです」

タクマ   「何言ってるんだ」

アキラ   「脅されて始まった関係だったけど、あなたは僕を見てくれてた。
       父の息子という僕じゃなくて、アキラっていう僕自身を。
       心地よかったんです。
       あなたの前では、僕は、ただの僕でいられたから」

タクマ   「だからって……何年も自分を捨てた男を想ってたのか?」

アキラ   「はい」

タクマ   「馬鹿だろお前」

アキラ   「はい。馬鹿だと思います」

タクマ   「せっかく親父さんが排除したクズを、
       お前が拾いなおしてどうすんだよ」

アキラ   「あなたのお父様は確かにそうだったのかもしれませんが、
       あなたは……僕にとっては、必要な人です。
       説得しますし、反対させません」

タクマ   「頼もしいこって。
       けどお前、これから政治の世界で生きてくんだろ?
       政治家は結婚も仕事のうちだろうが」

アキラ   「結婚するなと言うならしませんよ。
       そのかわり、あなたはずっと一緒にいてくれるんですよね?」

タクマ   「お前……」

アキラ   「僕の秘書になってください。
       あなただったら新人議員の世話くらい、楽なものでしょう?
       安定した職と収入、ついでに恋人までできる。
       これはビジネストークです、悪い話じゃないでしょう?」

タクマ   「……それがもうひとつの話か」

アキラ   「あなたのように脅迫はできないんで」

タクマ   「うるせぇよ」

アキラ   「僕の隣にいてください。ずっと」

タクマ   「……ほんとうるせぇ」

アキラ   「迷惑ですか? やっぱり僕じゃ、だめですか」

タクマ   「……あなたあなたうるせえ」

アキラ   「……え?」

タクマ   「秘書のことをあなたって呼んでどーすんだよ馬鹿」

アキラ   「……!」

タクマ   「言っとくが、俺が秘書になるからには、甘えたことは許さねぇ。
       お前をトップに押し上げてやる。
       まぁ、まずはその前に、お前の全部、俺で埋め尽くすけど」

アキラ   「……嬉しい、です……!」

タクマ   「離れてやらねぇぞ……、お前こそいいのか?」

アキラ   「はい……! だって、ずっと好きだったんですよ?
       これからだって、きっと、ずっと好きです!!!」

タクマ   「うるせえ。……覚悟しとけよ、アキラ」

アキラ   「っ……、……はい!!」



アキラ    願ったものが違いすぎて儚く消える恋もある。

タクマ    求めたものが違いながらも寄り添える恋もある。

アキラ    でも僕が願ったものは、ここにある。

タクマ    そう、俺が求めたものも、ここにある。






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