即席プラネタリウム

作:早川ふう / 所要時間 5分

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2018.02.27.


バスケをやっていてよかったと思うことは、そんなにない。
練習はきついし、休みもないし、上下関係も厳しいし。
でも、パスがうまく回ったり、シュートが決まれば嬉しいし、
試合に勝った時は、幸せを感じるし、チームメイトとの深い絆は宝だと思う。
負けたら悔しいけれど、もっと頑張ろうと思えるから不思議なものだ。
あと、体育でバスケをやる時に、ヒーロー気分を味わえるのも、少しだけ快感。



一週間前、幼馴染から声をかけられた。
球技大会でバスケのチームになったから、練習に付き合ってほしいらしい。
運動が苦手なイメージはなかったけれど、球技だけ、不得意だそうだ。
努力なくして成功なし。
一週間地道に続けてきた練習のおかげで、
レイアップの成功率はだいぶあがってきた。
といっても、スタミナがないから実践でどうなるかは疑問が残るけれど。

問題はロングシュートだ。
フォームが安定しないから、それこそ、左手は添えるだけ、と
口を酸っぱくして何度も言ったし、正直漫画を貸そうかとも思った。

ボールが、弧(こ)を描いて空を舞い、
ひっかかることなく、スパっとリングをくぐって、
床に落ちる音が響くと同時に、脳髄に電流が走るんだ。

わかるかな、この感覚。
君にもぜひ共有してほしいと思うから、
だから、練習も付き合ったし、応援していたんだよ。



「……入った!」

綺麗な3ポイントシュート、初成功。
君と同じくらい、むしろそれ以上にテンションが上がってしまって、
思わず君に抱きついていた。

決して深い意味のあるハグではなかった。
幼馴染だし、今でも一緒にゲームする時なんかは、こういうやりとりもあった。
もちろん、この練習中、シュートが決まればハイタッチしたり、
つまり何が言いたいかというと、
このやりとりは、幼馴染という関係ではあるけれど、
こと自分たちに関していえば、普通、だったはず。
でも、こうも固まられると、逆に戸惑ってしまうのだ。

見ると、頬がほんのり赤く、視線はあさっての方向へあった。
もしかして、照れてる……?
そんな、まさか。

数秒のち、目を逸らしていたはずの幼馴染は、
真剣な表情でこちらを見た。
その視線で、金縛りにあったみたいに動けなくなってしまい、焦る。



縮まる距離。
そんな、まさか。
心臓の音がスピーカーで流れてるんじゃないかというくらい、うるさい。
そんな、まさか。

もしかして、なんて、これは期待だ。
目の前に、幼馴染の顔が近づいてくる。
そんな、まさか。

一瞬。
触れただけ。
感触なんて、わからないくらいの短い時間。
でも確かに触れ合った唇はものすごく熱かった。

思わず一歩あとずさって、目を閉じて深呼吸。
ああ、少し落ち着いた。
でも。
目を開けると、またさっきより長く口付けられて。
もう何も考えられなくなった。








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