マリオネット

作:早川ふう / 所要時間 5分

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2017.09.16.


ここはとある見世物小屋。
といっても、小さな小屋なんかじゃないぞ。
ボクらはそれなりに名が知れてるし、ひとたび公演をすれば超満員の連続。
チケットにはプレミアがつくってもんだ。

ボクの名前はマリオ・ネット。
気軽にマリオと呼んでくれると嬉しい。
ボクは、……そうだなぁ、ここのトップスターといったところだ。
ボクは、お客が拍手を忘れるくらいの素晴らしい芸を、いつも見せているのさ。

何を不思議そうな顔をしてるんだい?
ああ、人形が動くのがめずらしいかな?

確かに、ボクの体は木と布でできているからね。
火気は厳禁だし、湿気や水気もボクには毒だ。
人間と違って、とてもデリケートなんだ。
扱いにはじゅうぶん注意してくれたまえ。

おいおいその目。
もしやボクがトップスターだということを疑っている?
ボクがこの身体でどんな芸をするか、想像がつかないらしいね。
まぁ見たことのないやつはみんなそうなんだ。
そういう目も慣れっこさ。
でもボクは、そういうやつらをことごとくファンにさせてきた。
ボクは自分の芸に誇りを持っているし、
もちろん仲間の芸にも誇りを持っている。
公演を見ていくといいよ。絶対に損はさせないから。

さて。ずいぶん騒がしくなってきただろう?
何が起こるかって……ちょうどこれからこの大ホールで、ボクらの公演が始まるのさ!
もちろんBGMは生演奏!
すごいだろう?

あ、そこに置いてある楽器、触ったらだめだよ。
とても高価なものだからね。

さてと……うん、問題なさそうだな。
この楽器をチェックするのは、ボクの仕事なんだよ。
なんてったってこの身体だからね。
響き具合で、チューニングを合わせてるんだ。
ほらね、いいかんじだろう。ボクの身体によく響く。


そうだそうだ。
客席のチェックもしないとね。
これも忘れちゃだめなんだ。
今の掃除係は新人で、まだ全然使えないヤツだからさ。
あ! やっぱりゴミが落ちてた。
団長がいくら叱ったってちゃんと仕事をしないんだから。
どうしてクビにしないんだろう。
まったく、ボクがこうしていつもチェックしてるからいいけど、
お客様に迷惑がかかってからじゃ遅いんだぞ!

人を育てるというのは大変だ。
仕事も、プロ意識も、そいつのなかで育てなきゃいけない。

此処は夢を売る空間。
お客様は、此処で現実を忘れ、芝居という名の夢の世界へ旅をする。
ボクらは夢先案内人だという誇りと自覚をもたなきゃ駄目だ。

さあ、もうすぐ幕が開くよ!
今日の演目は喜劇か悲劇か。
君はどちらがお好みかな。
楽しみにしていてね!!!


「あれ、こんなところにあったのか!
 おーーーい! マリオここにいたよー!
 さ、今日も頑張ろうね、相棒」









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