ここはとある見世物小屋。
といっても、小さな小屋なんかじゃないぞ。
ボクらはそれなりに名が知れてるし、ひとたび公演をすれば超満員の連続。
チケットにはプレミアがつくってもんだ。
ボクの名前はマリオ・ネット。
気軽にマリオと呼んでくれると嬉しい。
ボクは、……そうだなぁ、ここのトップスターといったところだ。
ボクは、お客が拍手を忘れるくらいの素晴らしい芸を、いつも見せているのさ。
何を不思議そうな顔をしてるんだい?
ああ、人形が動くのがめずらしいかな?
確かに、ボクの体は木と布でできているからね。
火気は厳禁だし、湿気や水気もボクには毒だ。
人間と違って、とてもデリケートなんだ。
扱いにはじゅうぶん注意してくれたまえ。
おいおいその目。
もしやボクがトップスターだということを疑っている?
ボクがこの身体でどんな芸をするか、想像がつかないらしいね。
まぁ見たことのないやつはみんなそうなんだ。
そういう目も慣れっこさ。
でもボクは、そういうやつらをことごとくファンにさせてきた。
ボクは自分の芸に誇りを持っているし、
もちろん仲間の芸にも誇りを持っている。
公演を見ていくといいよ。絶対に損はさせないから。
さて。ずいぶん騒がしくなってきただろう?
何が起こるかって……ちょうどこれからこの大ホールで、ボクらの公演が始まるのさ!
もちろんBGMは生演奏!
すごいだろう?
あ、そこに置いてある楽器、触ったらだめだよ。
とても高価なものだからね。
さてと……うん、問題なさそうだな。
この楽器をチェックするのは、ボクの仕事なんだよ。
なんてったってこの身体だからね。
響き具合で、チューニングを合わせてるんだ。
ほらね、いいかんじだろう。ボクの身体によく響く。
そうだそうだ。
客席のチェックもしないとね。
これも忘れちゃだめなんだ。
今の掃除係は新人で、まだ全然使えないヤツだからさ。
あ! やっぱりゴミが落ちてた。
団長がいくら叱ったってちゃんと仕事をしないんだから。
どうしてクビにしないんだろう。
まったく、ボクがこうしていつもチェックしてるからいいけど、
お客様に迷惑がかかってからじゃ遅いんだぞ!
人を育てるというのは大変だ。
仕事も、プロ意識も、そいつのなかで育てなきゃいけない。
此処は夢を売る空間。
お客様は、此処で現実を忘れ、芝居という名の夢の世界へ旅をする。
ボクらは夢先案内人だという誇りと自覚をもたなきゃ駄目だ。
さあ、もうすぐ幕が開くよ!
今日の演目は喜劇か悲劇か。
君はどちらがお好みかな。
楽しみにしていてね!!!
「あれ、こんなところにあったのか!
おーーーい! マリオここにいたよー!
さ、今日も頑張ろうね、相棒」