待ち合わせの数ヶ月後の話。
東京タワーから見える景色や、季節限定イベントのことなど、
ご存知ない方のために、一応こっそりイメージ画像を貼っておきます。
ちなみに画像は2014年の情報ですので注意。
イベントもイルミネーションも毎年違いますので、機会があればぜひ遊びに行ってみてください。
↓クリックすると拡大しますよ!

ちなみに155mのメインデッキ(大展望台)に昇った二人ですが、
更に上にある250mのトップデッキ(特別展望台)へはまた別のエレベーターで行くことになります。
少し階段をあがるのと、特別展望台へのエレベーターはかなり狭く、少し揺れるので、
心配性の彼は昇らせなかったという裏設定があります。
【配役表】
男(隆弘-たかひろ)・・・
女(明海-あけみ) ・・・
(雑踏。駅前でサラリーマンが周囲と時計を交互に見ている)
(小走りに駆け寄る女性)
女 「ごめん! 待ったよね!」
男 「大丈夫だよ。……タクシー使ったか?」
女 「え? 最寄駅まではタクシー使ったよ。そこから普通に電車で」
男 「ダメじゃないか。
タクシー使えって言ったのに」
女 「これくらい平気だって。
そんなに混んでなかったもん」
男 「あのなぁ、何かあってからじゃ遅いんだぞ?」
女 「タクシー代だってばかにならないじゃない」
男 「そんなんどうにだってなる!
危ないヤツだっているんだから!」
女 「もう、うるさいー。
うちのお母さんよりうるさいよー!」
男 「うるさくて結構。
お前はのんびりしてるからこれくらいで丁度いいんだ」
女 「せっかくのデートなのに、どうして怒られなきゃいけないのよー」
男 「拗ねるなって!」
女 「ふんっ」
男 「……ごめん。でも心配なんだよ。そこはわかってほしいな」
女 「それは……わかるけど」
男 「ちゃんとあったかくしてきたか?」
女 「あのねぇ。私子供じゃないんですけど?」
男 「だから、」
女 「はいはい、心配だって言うんでしょ?
聞き飽きた」
男 「ったく……」
女 「今日はどこ行くー? とりあえずゴハン?」
男 「そうだなぁ」
女 「どこで食べるのカナ〜?」
男 「……そんな目で見るなよ」
女 「だって、今日の、この夜に呼び出すってことは、
ちゃんとプランがあるんでしょう?」
男 「そりゃあ、ね」
女 「楽しみ」
男 「あまりハードル上げるなよ」
女 「自信ないの?」
男 「俺にスマートなエスコートを求めるなよ、
そんなに器用じゃないの知ってるだろ?」
女 「情けないなあ」
男 「うるさい」
女 「逆ギレ?」
男 「いいから、行くぞ」
女 「はーい。
で、どこ行くの?」
男 「メシ行く前に、行きたいところあるんだけど、いい?」
女 「お? どこどこ?」
男 「内緒」
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(東京タワー 正面入り口前)
女 「わぁ……」
男 「あえて、こっちに来てみました」
女 「懐かしいけど、なんか変な感じ」
男 「久しぶりだもんな」
女 「そうだね。来る機会ないし。
昔はここの大きなツリーだけだったのに、今こんなに綺麗になってるんだね。
……うん……ほんと、綺麗……」
男 「今更かよって言われたらそれまでだけど、
あっちは遠いしなあ」
女 「……それだけじゃないんでしょ?」
男 「覚えてるだろ?」
女 「そりゃあね」
男 「……今はあの頃とだいぶ変わったみたいだからさ。
まぁネット情報だけど。
久しぶりにここに来るのもいいんじゃないかって思って」
女 「そっか……」
男 「混むのはわかってたんだけどさ」
女 「あんだけ体気をつけろって言っておいてー、勝手なんだから」
男 「ゴメン」
女 「でも、嬉しい」
男 「ほんと? よかった」
女 「展望台は?」
男 「体調が大丈夫なら昇るか?」
女 「全然だいじょーぶっ」
男 「じゃ、行こう」
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(東京タワー 大展望台)
女 「……展望台も綺麗になったんだね。
なんか幻想的で……知らない場所みたい」
男 「前来た時はちょこちょこ改装し始めてたもんな」
女 「……前来た時も、楽しかったよ?」
男 「今日は?」
女 「もっと楽しいです」
男 「そっか」
女 「……なんか、嬉しいな」
男 「え?」
女 「こんな風になれるって思ってもみなかったから」
男 「こんな風に?」
女 「……10年前はともかく、結婚してからはなかなか、ね。
あまり、会話もなかったじゃない」
男 「それは反省してるよ」
女 「子供できなかったことだって、色々言われたし」
男 「それもごめん。……もっとお前のこと守ってやんなきゃいけなかったのに」
女 「でも、言ってくれたじゃない。
お義母さん達にもそうだし、私にだって」
男 「……何年も、しんどい思いさせたんだし、
三行半(みくだりはん)つきつけられてもしょうがなかったのに。
お前は今も、俺と一緒にいてくれてる。……感謝してるよ」
女 「貴方だって。
こんな私と一緒にいてくれて、ありがとう」
男 「馬鹿だよな、お前も」
女 「馬鹿でいいもん。幸せだから」
男 「幸せか?」
女 「うん……幸せ」
男 「……俺もだよ」
女 「神様にも感謝かな」
男 「……そうだな」
女 「あ、南側行こう?」
男 「え?」
女 「覚えてない? ほら、下に見えるじゃない!」
男 「ああ、アレか!」
女 「……あ、ほら、あれあれ! この景色はやっぱり変わらないね」
男 「大規模な工事でもない限り変わらないだろ」
女 「雰囲気考えてよ!
つまんないこと言うんだからもうー」
男 「ご、ごめん」
女 「これさ、夜の、しかもここからしか見えないし、素敵な偶然っていうか。
……いいよね、こういうの」
男 「そうだな。普通下運転してると気付かないし」
女 「そっちはそうよね。
でも、これ教えてくれたの、貴方だったじゃない」
男 「あれっ、そうだっけ?」
女 「えーっ、覚えてないの!?」
男 「……多分、友達に必死にリサーチかけたとか、
そういうにわか知識だったはず……」
女 「えっ」
男 「……だから言ったろ?
スマートなエスコートができるほど、俺は器用じゃないの!」
女 「覚えてないってのは、スマートとかそういう次元じゃないよね」
男 「うっ……」
女 「もう、相変わらずね、貴方は」
男 「うるせー」
女 「……展望台や、イルミネーションの雰囲気がいくら変わっても、
この景色が変わらないと、ちょっと安心するな」
男 「そっか。
……変わらないものも、大事だよな」
女 「うん。
あ、でも。変わるものも勿論大事よ」
男 「……これからの生活?」
女 「うん。……楽しみだね」
男 「そうだな」
女 「どっちがいい?」
男 「どっちでもいいよ。まだわからないんだろ?」
女 「先生わかったかも、とは言ってたんだよ」
男 「えっそうなのか!?」
女 「でもまだ聞かないでおきますって言ったからさ」
男 「あっ、そう……」
女 「残念がってるんじゃんー」
男 「そりゃあ……知りたい気持ちはあるからな」
女 「今度、一緒に病院行く?」
男 「次いつだよ」
女 「明日」
男 「明日?!」
女 「……仕事デショ」
男 「……そうだな」
女 「じゃ、聞いてきてあげる」
男 「頼む」
女 「可愛い服とかも欲しいなあ」
男 「それは一緒に買いに行くからな」
女 「はいはい。一緒に行こうね」
男 「(うなずく)」
女 「そういえば、ゴハンってどこで食べるの?
下のお店?」
男 「普段ならそれでもいいけど、せっかくなんだからどこか食べに行こう。
なるべく移動は短めにするから」
女 「うん、わかった」
男 「もう腹へったのか?」
女 「ちょっとだけね」
男 「……あのさ、普通、食べられなくなるもんじゃないのか?」
女 「ああ、そういう人の方が多いみたいよね。
私のは食べづわりってやつだったの」
男 「た、食べ……?」
女 「は〜い、パパはもう少〜し勉強しましょうね〜」
男 「……子供扱いかよ」
女 「貴方が私にするほどじゃないでしょ?」
男 「ったく……」
女 「ふふん。勝った!」
男 「……そろそろ行くか」
女 「ハーイ」
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(東京タワー 正面入り口前)
女 「……外出るとちょっと寒いね」
男 「大丈夫か?」
女 「へーき」
男 「……無理させちゃうかなって思ったけど、どうしてもここに来たかったんだ」
女 「……うん」
男 「アレは、ちゃんと覚えてるから」
女 「それ威張るとこじゃない。
むしろ忘れてたらひっぱたくー」
男 「あっそう……」
女 「ふふっ。
その気持ちは、私にもちゃんと伝わってるから。
だから、嬉しいよ」
男 「よかった」
女 「それで? わざわざそういう話題にするってことは、言ってくれるのかな?」
男 「……やっぱスマートにはできねぇなあ」
女 「スマートじゃなくてもいいの。気持ちが伝われば、それでいいんだから」
男 「そ、そうは言ってもな…」
女 「……あれ!? ライトアップが消えた……!」
男 「あ、時間か。ほら……見てろよ」
女 「……あ! ……ハートマーク!?」
男 「うん」
女 「わぁ……」
男 「……まぁ……うん……これを二人で観るっつーのが、
一応、その、なんだ、永遠の愛の証だーとかいうイベント、らしいんだ、うん」
女 「……もしかして調べた?」
男 「まぁね」
女 「ふふっ……。変なところでロマンチストなんだから」
男 「ダ、ダメだった?」
女 「嬉しい。……嬉しいよ」
男 「世界で一番、幸せにする」
女 「……、……そう、言ってくれたよね、あの日」
男 「色々、至らないところあったけどさ、でもずっと、そう思ってるよ」
女 「ありがとう。……でもこれからは、二番目でいいんだよ?」
男 「え?」
女 「世界で二番目に幸せにしてね。
私も貴方を、世界で二番目に幸せにしてあげるから」
男 「あ、そういうことか……」
女 「肝心なところ鈍いんだから」
男 「でも気付いたんだから進歩だろ!」
女 「来年は……さすがに来れないだろうけど。
でもいつかまた連れてきてね」
男 「勿論。……今度は三人で来よう」
女 「うん、約束ね」
男 「約束」
女 「……あ、蹴った」
男 「……この子も約束って言ってるんだろうな、きっと」
女 「ちゃんと守ってよ?」
男 「勿論」
女 「ふふ。楽しみ。大きくなったら三人で来ようね〜」
男 「……明海」
女 「えっ!?」
男 「……メリークリスマス」
女 「……っ、……メリークリスマス、隆弘」