ハリネズミの理論に願うこと

作:早川ふう / 所要時間20分 / 2:0

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2021.05.17


【登場人物紹介】

北村啓介(きたむら けいすけ)

 フリーター。有起哉より5歳ほど年上。特定の恋人はナシ。
 有起哉のセフレの一人で、付き合いは1年ほど。
 予定さえ空いていれば、呼び出しには応じ、大体どこにでも飛んでくる。
 最近有起哉にハマりすぎている自覚はあるものの、
 有起哉が可愛すぎるせいだと無理やり自分を納得させている。

 
本庄有起哉(ほんじょう ゆきや)

 大学生。成人済。明るい性格で、人懐っこく、可愛らしい。
 周囲にもゲイだとオープンにしており、性には奔放。
 自他ともに認める経験豊富なビッチ。セフレも複数いる。
 決まった相手は作らない、という噂があるが実は本命の男がいる。
 啓介の想像は実は結構あたっていて、内心だいぶ焦った。



【配役表】

啓介・・・
有起哉・・・



(大学の図書室内、周囲から死角となる場所でコトに及んだ二人。事後)

啓介  「……おい。そろそろ時間じゃね」

有起哉 「え……もうそんな時間?」

啓介  「ユキ、汗やばい。大丈夫か?」

有起哉 「うん。タオルと汗拭きシートで何とかする」

啓介  「用意周到だな」

有起哉 「慣れてるもーん」

啓介  「慣れてる、ねぇ……」

有起哉 「こういうところでするの、背徳感やばいじゃん?
     すっごく興奮しちゃうからやめられなくって」

啓介  「興奮するんだ?」

有起哉 「うん」

啓介  「……声を抑えないと、誰か人が来るかもしれないから?」

有起哉 「んっ」

啓介  「こんなとこでシてたの、バレちゃうから?」

有起哉 「や……」

啓介  「恥ずかしい姿、見られちゃうかもしれないから?」

有起哉 「んんっ、興奮しちゃうよぉ」

啓介  「それとも見られたい?」

有起哉 「み、見られたくないよぉ」

啓介  「ユキが快楽に溺れてる姿、撮影されて動画出回っちゃうかもよ」

有起哉 「やだぁっ!」

啓介  「って言う割には、ちょっと大きくなってんじゃん」

有起哉 「こ、これはっ」

啓介  「興奮しちゃう、じゃなくて、興奮しちゃったんだろ?」

有起哉 「だって、想像したらさぁ……」

啓介  「それで興奮するってよっぽどだろ。
     もしこんなことしてんのバレたら、よくて停学、
     退学だってありえるだろうに」

有起哉 「俺より啓くんの方が大変じゃない?
     不法侵入者なんだから」

啓介  「ユキが招き入れたんだろ」

有起哉 「んふふ」

啓介  「で、どうする? せっかく大きくなったし、もう一度する?」

有起哉 「だって時間!」

啓介  「ああ、残念」

有起哉 「俺も残念」

啓介  「本当?」

有起哉 「え? 本当だけど、どうして?」

啓介  「いや、……あのさ」

有起哉 「ん?」

啓介  「ユキにとってセックスって、もしかして作業ゲーだったりする?」

有起哉 「は、いきなり何その質問」

啓介  「いや、ユキって結構評判と違うなと思ってさ」

有起哉 「えー? どう違うの?」

啓介  「あ、……ごめん、これって地雷?」

有起哉 「……別に。大丈夫だよ。
     まわりからどう思われてるかなんて、よーく知ってるし。
     俺ってビッチで有名でしょ」

啓介  「まぁ、そういう噂はすげー聞いた」

有起哉 「なのに、評判と違うって?
     まさかビッチに見えないとか言いたいの?」

啓介  「うん」

有起哉 「嘘だぁショック! 俺結構慣れてるしそれなりにテクニックあると思うんだけど!?」

啓介  「セックスに慣れてるのはわかるよ。
     だから作業ゲーって言ったんだ」

有起哉 「ああ、なるほど。
     うーん、心外だなぁ、俺作業でセックスしてように見えるんだー」

啓介  「言葉が悪かったのは謝るけど、なんか違和感あるんだよなあ。
     がっつりノってるわけじゃないけど、楽しんでないわけでもない。
     そんな感じがするんだ」

有起哉 「ふぅん、そんなもんかなぁ」

啓介  「自覚ない?」

有起哉 「ビッチじゃない自覚なんて、あるわけないじゃん。
     俺に今、何人彼氏がいると思ってるの?」

啓介  「ゼロ」

有起哉 「……っ、どうしてそんな即答するのさ。
     啓くんとだって、こういうこといっぱいしてるじゃない。
     ちゃんとカウントしてよね」

啓介  「セフレを彼氏と呼ぶなら、人数はわからないけど」

有起哉 「俺と遊んでくれる優しい人はたくさんいるんだよ。
     これ、立派なビッチ発言だと思うけど?」

啓介  「……うーん。そうだよなぁ」

有起哉 「ビッチに見えないなんて印象になる理由、ないはずなんだよ?」

啓介  「……いや、あるよ」

有起哉 「え?」

啓介  「でも、それ言ったら、ユキ、怒るんじゃない?」

有起哉 「……そこまで言うなら逆に言ってほしいけど。気になる」

啓介  「怒るだけならいいけど、傷つけたりしたら嫌だし」

有起哉 「俺が傷付いたところで何も困らないでしょ」

啓介  「これで関係が終わりになったら困るよ」

有起哉 「えーそれほんと?」

啓介  「ユキのことは、結構気に入ってるから」

有起哉 「んふふ、嬉しい」

啓介  「だから言わない」

有起哉 「でもだーめ。口に出した時点でアウト。言わないなんて選択肢は与えません」

啓介  「我儘だな」

有起哉 「そうかな? 素直だと思うけど?」

啓介  「うーん」

有起哉 「言ってよぉ」

啓介  「だから……その……」

有起哉 「はい、さーん、にー、いーち」

啓介  「あー、えっと……ユキってネコなのにゴムするじゃん」

有起哉 「するね」

啓介  「絶対ゴムするじゃん。自分でも持ち歩いてるだろ」

有起哉 「うん」

啓介  「どうして?」

有起哉 「だって後始末ラクなんだもーん。
     こんな場所で盛っても大丈夫っていうのは魅力だよね。
     匂いや汚れ対策ばっちり!」

啓介  「それが理由?」

有起哉 「そうだよ」

啓介  「ふぅん」

有起哉 「不満?」

啓介  「まぁね」

有起哉 「違う理由を想像してた?」

啓介  「今言った理由はあくまでメリットのひとつで、違う理由が本音だと思ってる」

有起哉 「俺が口に出したわけでもないのに?」

啓介  「まぁ、確信してるから」

有起哉 「勝手にそう思い込まれてるってちょっと嫌かも」

啓介  「だから言ったろ、言いたくないって。
     言わせてるのはユキだ」
     
有起哉 「あー確かにそうだねぇ」

啓介  「ここでやめとこうか。時間もないだろ」

有起哉 「いいよ。最後まで聞く。気になるし」

啓介  「授業は?」

有起哉 「次もほんとは空き時間なの」

啓介  「え。……もしかして、次の男と約束ある?」

有起哉 「違う。レポートやろうと思ってた」

啓介  「ああ、そっか」

有起哉 「嘘じゃないからね」

啓介  「疑ってないよ」

有起哉 「……で。話の続き、どうぞ」

啓介  「どこまで話したっけ」

有起哉 「知らないよもうっ」(少しむくれて)

啓介  「はは、可愛いな。キスしていい?」

有起哉 「訊かれるより、無理やりされる方が好みなんだけど」

啓介  「はいはい了解。(軽く口づける)」

有起哉 「ん……、え、これだけ?」

啓介  「可愛かったからキスしたかっただけだし」

有起哉 「んふふ、可愛いって言われるの嬉しい」

啓介  「そっか」

有起哉 「でも軽いキスなんかじゃ全然足りないんですけどー」

啓介  「……ユキって、キス好きだよな」

有起哉 「うん、好き」

啓介  「でもフェラ嫌いだろ」

有起哉 「え。……嫌いじゃないよ。むしろ好きだけど。
     疑うならしようか? 喉奥まで犯されるの大好きだよ俺」

啓介  「違う。される方の話」

有起哉 「あー……」

啓介  「ゴムしてるのはフェラすんなって意味だと思ってたよ」

有起哉 「うーん、……どう、かなぁ」

啓介  「じゃあフェラしていい?」

有起哉 「えっ?」

啓介  「俺の口の中に出せばいいだろ。飲んでやるから」

有起哉 「待ってっ」

啓介  「待たない」

有起哉 「フェラはやだっ!」

啓介  「……わかってる。無理にしたりしないよ。嫌なんだろ」

有起哉 「……ごめん」

啓介  「じゃあ、かわりに、ユキのこと名前で呼んでいい?」

有起哉 「えっ……」

啓介  「有起哉」

有起哉 「ッ……」

啓介  「確か名前、有起哉だったよな? 違った?」

有起哉 「あってるけど、……ごめん、呼ばないで」

啓介  「……だよな。ほら。こういうところ」

有起哉 「何が、言いたいの」

啓介  「あくまで俺の勘だけど、ビッチで有名なユキには実は本命がいて、
     名前呼びも、たぶんフェラも、そいつにだけは許してるんじゃない?」

有起哉 「妄想力、豊かすぎない?」

啓介  「誤魔化し方、下手すぎない?」

有起哉 「誤魔化してるわけじゃない。
     ただ単に好きじゃないってだけで、他に理由なんてないよ」

啓介  「そう?」

有起哉 「大体啓くん、言ってることおかしいよ」

啓介  「え? おかしいかな?」

有起哉 「たとえば、俺に本当に本命がいたとして、だよ?
     本命がいるのに、セフレ何人もいるのっておかしいんじゃない?」

啓介  「まぁ、確かに」

有起哉 「啓くんの想像どおりだとすると、俺に名前呼びもフェラも許す本命がいる、
     それってつまり本命と身体の関係だってあるわけだよね。
     なのに他に何人もセフレがいるって、どういう状況なのさ?」

啓介  「……本命がセフレ希望なんじゃないの。
     その本命にも他に本命がいて、ユキのことは遊び、とか」

有起哉 「それって俺すっごいかわいそうなヤツじゃん」

啓介  「でもそう考えると辻褄があう」

有起哉 「俺をかわいそうなヤツにして楽しいの?」

啓介  「いや別に、そういうことが言いたいわけじゃないよ。
     人の貞操観念なんてそれぞれだし、俺の価値観だとそう見えたってだけで、
     全然違うんだったらそれもそうなんだろうし」

有起哉 「大ハズレですー」

啓介  「でもユキはさ、俺とするの、あんまり楽しそうじゃないよ」

有起哉 「そうでもないけどなぁ……、あっもしかして、拗ねてる?」

啓介  「……そうかも」

有起哉 「やだー啓くんって可愛いんだね!」

啓介  「可愛くねーし。可愛いのはユキです」

有起哉 「んふふ、ありがと。じゃあ二人とも可愛いってことで」

啓介  「可愛い談義はいったん終わり」

有起哉 「えー」

啓介  「俺はさ、別にいいんだ。
     今好きなやついないし、ユキは可愛いし、
     だからお互い気持ちよくなれるなら、って」

有起哉 「うん、お互い気持ちよくなってるじゃない」

啓介  「本当に、なってる?」

有起哉 「なってるよ。どうしてそこに自信ないのさ。
     あ、ゴム見る? 俺がどれだけ出したかわかるよ」

啓介  「そういうことじゃ、なくてさ……」

有起哉 「んふふ。俺、啓くんのそういうところ好きだよ。
     俺のこと、求めてくれてるんでしょ。
     優しくて、まっすぐ俺を見てくれるところ、すごく好き」

啓介  「う。それは。照れる」

有起哉 「あーっもしかして、俺のこと本気になっちゃったかな?」

啓介  「いや、それはないよ。だって……お互い困るだろ」

有起哉 「んふふ、そうかもね」

啓介  「俺はただ、ユキに気持ちよくなってほしくて」

有起哉 「んもう、優しいんだから。セフレにしとくにはもったいないね」

啓介  「じゃあ特別なセフレってことで。
     ……俺と会う頻度増やしてくれてもいいよ」

有起哉 「考えとく」

啓介  「……それ絶対考えないやつじゃね」

有起哉 「そんなことないって。信じてよ(軽く口づける)」

啓介  「ん……可愛いの、ずるい」

有起哉 「んふふ、ありがと。じゃあ、もっかいシよっか」

啓介  「え? レポートはいいの?」

有起哉 「だいじょーぶ」

啓介  「でも……」

有起哉 「襲ってくれないなら襲っちゃうよ。
     フェラして無理やりにでも勃たせて、挿れちゃう」

啓介  「俺が抵抗したら?」

有起哉 「えーっ、啓くん、俺が欲しがってるのに、拒否できるの?」

啓介  「無理だな、即降参する」

有起哉 「うん、ココはもう降参してるね」

啓介  「っ……」

有起哉 「舐めるよ」(咥えて舐め始める)

啓介  「っ、ん、……」

有起哉 「(咥えながら)ゴムの味する」

啓介  「そりゃ、さっきはつけてた、し」

有起哉 「でも、啓くんの味がいっぱい広がってきたよ」

啓介  「言うな」

有起哉 「(口を放して)俺の方が我慢できなくなってきちゃった……。
     啓くんが、欲しいよ。お願い」

啓介  「だから、可愛いのずるいんだって……」

有起哉 「俺の中ぶち込んで、ぐっちゃぐちゃに犯して」

啓介  「すげー誘い文句……、ユキ、可愛いよ」

有起哉 「啓くん、……ね、早く、欲しいッ」

啓介  「黙って(深く口づける)」

有起哉 「んっぅ、う、ん、……んっ、う、ぷはっ、はぁ、はぁ」

啓介  「挿れるよ」

有起哉 「うん、きて…………ア……ッ!」



啓介   俺の腕の中で淫らに悶えるユキはとても綺麗で。
     可愛く啼くたびに思い知るんだ。
     ユキは俺のものじゃないって。


有起哉  もう自覚してるんだ。
     あいつとじゃなきゃ、心が震えるほどのセックスにならないって。
     あいつ以外は、誰だっておんなじ。
     雑に扱われようが、大事にされようが、
     あいつじゃなきゃ意味がないってわかってる。



啓介  「ユキっ、ユキっ、ユキの中、すっげー気持ちいい……っ」

有起哉 「あっ、あっ、奥、もっと、奥突いてっ、あああっ」

啓介  「もっと、奥に、欲しいの?」

有起哉 「ほしいよぉっ、奥いっぱいに欲しいっ」

啓介  「喰われそうな勢いだな」

有起哉 「奥突かれながら出されたいっ」

啓介  「中に? いいの?」

有起哉 「あんっ、んっ、ほし、いっ、熱いのっ、いっぱい、出してぇっ」

啓介  「出してやるよ、ユキの中、俺でいっぱいにしてやるっ」

有起哉 「嬉し、い、あ、あっ、あっ、あっ」

啓介  「やば、そんな、締めんな」

有起哉 「気持ち、いいのっ」

啓介  「だから、ユキ、可愛いんだって」

有起哉 「啓く、ん、あっ、お願い、ちょーだい、ねえ、お願いっ」

啓介  「もう、イきそ……出るっ」

有起哉 「あっ、そこ、そこぉっ、んっ、イくっ、イっちゃ、あああああああっ」



啓介   今日でユキとの関係が終わったとしても、俺は驚かない。

有起哉  他の男に抱かれたあとは、無性にあいつに会いたくなる。

啓介   所詮セフレなんてそんなもんだってわかってる。

有起哉  俺はビッチだから……欲しくてたまらなくなっても仕方ないでしょう?

啓介   でもせめて、ユキが少しでも幸せであればいいと願うよ。 





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