Girl’s Luxury

作:早川ふう / 所要時間 20分 / 0:2

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2018.10.27.


【登場人物紹介】

鷹野茉莉(たかの まり)
  都内で事務職に就いている。
  大学時代に知り合った彼氏と同棲していたが、
  彼氏が転勤になった為、今は社員寮にて一人暮らししている普通の女の子。
  ボーナスで自分へのご褒美に可愛い服を買うタイプ。
  和泉とは、高校からの友達。

谷和泉(たに いずみ)
  都内で営業職に就いている。
  大学時代から一人暮らしを始め、料理も得意で家庭的な反面、
  サバサバしている性格だが、ツライ恋にハマってしまった。
  ボーナスは貯金するタイプ。
  茉莉とは、高校からの友達。


【配役表】

茉莉・・・
和泉・・・



(和泉の家に遊びにきた茉莉。リビングでお酒を飲んでいる二人)



茉莉   「一緒にいられない恋人って、意味あるのかな」

和泉   「は……?
      いきなり何言ってんの?」

茉莉   「和泉とはさ、最低でも週1は会うし、
      ゴハン食べて、お酒飲んで……
      こうやってお互いの家に遊びにきたりもするしさ、
      仕事のことも、彼氏の愚痴だって、何でも言えるけど……」

和泉   「まぁうちらの付き合いもなかなかに長くて濃いよね〜」

茉莉   「ほんとね〜」

和泉   「で、彼氏と何かあったの?」

茉莉   「……うちら、期間限定とはいえ、遠距離じゃない。
      まぁそれ関係よね」

和泉   「ふぅん?」

茉莉   「最近、彼、遠距離だってことに甘えてる気がするの」

和泉   「遠距離に甘える、とは」

茉莉   「遠距離だから仕方ない、って……甘えじゃない?」

和泉   「あーそういう意味かー……」

茉莉   「仕方ない、じゃなくて、じゃあどうするかって話だと思うのね」

和泉   「うんうん、そうねえ」

茉莉   「【浮気しないって信じてる】、笑顔でそう言うのよあいつ」

和泉   「あー……」

茉莉   「そう言われるとさ、もう何もできないじゃない」

和泉   「マジ呪いだよねそれ」

茉莉   「そりゃ向こうは仕事で、二年経ったら戻ってくるし、
      一生離れ離れじゃないのもわかってるけどさあ……」

和泉   「だからって二年餌やらなくていいと思ってるんだとしたら、
      それは信頼じゃなくて、ただの慢心だよね」

茉莉   「そうよそれそれ」

和泉   「最近電話は?」

茉莉   「さっぱり」

和泉   「LINEは?」

茉莉   「……たまに?」

和泉   「……どっちから?」

茉莉   「……私」

和泉   「……向こうから連絡くれることって……?」

茉莉   「……クリスマスの時と、年明けてすぐきたLINEくらい」

和泉   「あー……押さえるところは押さえてるからそれでいいと思ってるパターンね」

茉莉   「やっぱそう思う?」

和泉   「うん」

茉莉   「これで寂しいと思ったり不満を言ったりすればさ、
      こっちが悪者なわけよね」

和泉   「遠距離だからこれ以上何もしようがない。
      なのにそれ以上を求めるそっちが悪い、って言われそうだよねぇ、男の常套句」

茉莉   「こっちはただ待つしかできなくて。
      浮気しようものならこっちが悪くなるし。
      ……まぁできないけど」

和泉   「他に目を向けられれば楽だけど、それが簡単にできるなら悩まないよね」

茉莉   「ほんと、どーしようもないからさ……」

和泉   「でもさ、茉莉が物分かりいい女演じてるのも悪いんじゃない?」

茉莉   「私のせい!?」

和泉   「我慢して、弱音見せずに、強がって、彼の前では、ただ笑顔だけ」

茉莉   「語呂よすぎなんだけどそれ」

和泉   「はは!
      でも、茉莉ってそうでしょ」

茉莉   「うん……そう、かも」

和泉   「だから男がつけあがるんだよ」

茉莉   「じゃあどうすればいいの?」

和泉   「いっそほんとに浮気しちゃえば?
      浮気が嫌なら、他の男にきちんと乗り換える」

茉莉   「でもやっぱり……別れるのは嫌なんだよ……」

和泉   「彼が好き?」

茉莉   「……うん」

和泉   「大事?」

茉莉   「うん」

和泉   「じゃあ、しょうがないんじゃん?
      ちょっとは弱音をみせるとかして、自分が平気じゃないってこと、
      相手にわかってもらうしかないでしょう」

茉莉   「……会える距離だったらなあ」

和泉   「ああ……国内だったらまだ何とかなったかもしれないよね」

茉莉   「うん。すぐ遊びに行って顔が見れる距離じゃないし……」

和泉   「自分じゃどうにもできないコトって、つらいよね」

茉莉   「うん……」

和泉   「よしよし」

茉莉   「和泉ーーーっ」

和泉   「ハイハイ」

茉莉   「……なんかいっつも私、和泉に甘えてばっかりだね」

和泉   「いいよぉ甘えてー」

茉莉   「って言ってくれるから、いっつも甘えちゃうんだけどさ」

和泉   「私は茉莉の彼氏とそんなに面識もないから、好き勝手言えるし。
      茉莉が嫌じゃないなら、こんな愚痴いつでもウェルカムだよ。
      絶対味方してあげる」

茉莉   「えへへ、ありがと」

和泉   「ぽっと出の男に大事な親友奪われて、
      まぁ、親友が幸せならそれでいいんだけど、
      こうやって話聞いてるとさ、大事にしないなら返せよ、って
      殴りたいくらいだよね」

茉莉   「やだ和泉イケメン」

和泉   「そんじょそこらの男より甲斐性はあるよ私」

茉莉   「カッコイイ!」

和泉   「ふふん」

茉莉   「……和泉が男だったらなー……」

和泉   「あはは、もし男だったら?
      私と付き合ってた?」

茉莉   「絶対惚れたと思う」

和泉   「やだトーンがマジすぎるんだけどっ」

茉莉   「ごめん」

和泉   「もし私が茉莉と付き合ってたら、
      ……って言っても、今と大差ないんじゃない?
      それくらい会ってるでしょ私達」

茉莉   「……あのさ」

和泉   「んー?」

茉莉   「酔ってるから、ってことで、話半分に聞いてね」

和泉   「なぁにー改まって」

茉莉   「……たまにね、わかんなくなるんだ」

和泉   「なにが?」

茉莉   「彼氏と付き合ってる意味……マジでさ」

和泉   「意味ねぇ……そんな小難しく考えるのがいけないんじゃない?」

茉莉   「小難しく考えないといけないの」

和泉   「なんで?」

茉莉   「だって、楽な方に逃げちゃうから」

和泉   「……逃げるのが悪いことだとは思わないけど?」

茉莉   「でも、……逃げて、悪くなったら、どうしようもないから」

和泉   「話が見えないな。何が悪くなるの?」

茉莉   「……、わかんない」

和泉   「……ふふ、なにそれ。
      ……酔ってる?」

茉莉   「うん」

和泉   「ま、酔えるなら酔っちゃえ。
      介抱は任せろ」

茉莉   「だから和泉イケメンすぎる」

和泉   「イイ女と言いなさい」

茉莉   「……そだね、ごめん」

和泉   「ああ、そっか。それでか」

茉莉   「ん?」

和泉   「私が彼氏だったらいいのにっていうさっきのアレは、それなりに本気?」

茉莉   「……。……ゴメン」

和泉   「茉莉の性格くらいちゃんと把握してるから、
      別にこんなことくらいで怒ったりしないよ」

茉莉   「……でも和泉に失礼でしょ」

和泉   「ふふ。まぁ、茉莉の気持ちもわからなくはないよ。
      彼氏にほっとかれて、寂しいって気持ちどうにもできなくて、
      それを受け止めてくれる相手は私で、
      私とは長い付き合いだし、頻繁に会って、居心地いいし。
      【じゃあどうして苦しい思いまでして、彼と付き合ってるんだろう。
      私には和泉がいればそれでよくない?】」

茉莉   「あーーーー!!
      もうほんっとその通りなんだけどーーー!!!
      そうやって和泉の口から聞いちゃうとーーー
      私ってあまりにも嫌な奴すぎるじゃないのおおおお!!!」

和泉   「あはははは!!」

茉莉   「別にほんとに和泉と浮気したいわけじゃないから……
      それは信じてね!?」

和泉   「それも傷つくなー」

茉莉   「えっ!?」

和泉   「和泉が男だったら浮気したい、とか、
      和泉に乗り換えたいよ、くらいは言ってもいいんだよ」

茉莉   「……それは……それも考えたけどさ、
      もしも、もしね、和泉が男だったらさ、
      まず私は彼と付き合ってないかもしれないって思ってさ。
      浮気とかってレベルじゃない、もともと本命っていうか……
      あー……なに言ってんだろ私……」

和泉   「ふふ、酔ってるせいだよ、ね?」

茉莉   「うん……酔ってる。お酒美味しい」

和泉   「このワイン当たりだったよね。
      もうあいちゃうもん」

茉莉   「今日はとことん飲んで酔って、和泉に介抱してもらうぞーー!」

和泉   「あっは、そう言ったもんね。
      いいよ〜ちゃんとしてあげるから、今日はとことん飲め!」

茉莉   「うん!!」

和泉   「……ワインあいちゃったね。どうする?
      コンビニ行って買い足す?」

茉莉   「えー……これから行くのお?」

和泉   「あとビールくらいしかないよ。
      焼酎もあんまり好きじゃないでしょ」

茉莉   「割れば飲めるもん」

和泉   「……あ、シャンディーガフ飲めるっけ?」

茉莉   「なんだっけそれ?」

和泉   「ビールとジンジャーエール合わせたやつ」

茉莉   「飲むーーー!!!」

和泉   「甘くないと飲めないんだから、茉莉はほんっと、お子ちゃまだよね〜」

茉莉   「飲めなくはないもん!
      ……好きじゃないだけで」

和泉   「一緒でしょ」

茉莉   「うーー、早く飲ませろ飲ませろー!」

和泉   「ハイハイ」

茉莉   「(飲んで)んー、和泉の作るお酒美味しい」

和泉   「愛情こめてますから。
      プロでもなんでもないけど、茉莉への愛情なら負けないぞっ」

茉莉   「私愛されてるーーー!」

和泉   「ふふ」

茉莉   「ふふ、美味しいね〜〜いくらでも飲めるね〜〜」

和泉   「……ねえ」

茉莉   「んー?」

和泉   「……私もさ、恋バナしていい?」

茉莉   「おっ、いいよぉ、聞くよお〜〜」

和泉   「……実は私もね、結構ツライ恋にハマっちゃったの」

茉莉   「え!?
      ……初耳なんだけど」

和泉   「自分でハマってるって、認めたくなかったのね。
      だからこれは恋じゃないって思おうとしてた」

茉莉   「……恋してるなら……私とこんなに頻繁に会ってていいの?」

和泉   「だから言ったでしょ、ツライ恋だって」

茉莉   「まさか不倫!?」

和泉   「不倫だったらよかった」

茉莉   「いやよくないよ、不倫じゃなくてよかったよ」

和泉   「えー。だって相手に奥さんがいるんだったら、
      ちゃんと諦める努力できたじゃん。
      まだ結婚してないから踏ん切りがつかないの」

茉莉   「あー……彼女はいるのね?」

和泉   「うん」

茉莉   「……和泉は、その、浮気相手にされてる、ってコト?」

和泉   「……どーだろ。
      あっちの気持ちはたぶんそうだとは思う……」

茉莉   「……彼女に、なりたい?」

和泉   「違うのよねこれが」

茉莉   「えー……??」

和泉   「ややこしいでしょ」

茉莉   「うん、よくわかんない」

和泉   「だから茉莉にもなかなか言えなかった」

茉莉   「言わないなんてみずくさいって一瞬思ったけど、
      今話聞いて、しょうがないなって思ったよ。
      自分でうまく処理できないと、人にも話せないよね」

和泉   「うん。……私ね、好きな人がいるのよ」

茉莉   「うん、今聞いたよ」

和泉   「そうじゃなくて……」

茉莉   「?」

和泉   「そいつと付き合ってる理由は、好きな人の話を聞けるからなの」

茉莉   「……え?」

和泉   「……軽蔑した?」

茉莉   「……ごめん、あんまり意味がわかってない」

和泉   「Aさんには一応付き合っているBさんという人がいます。
      でも、そのBさんには、彼女がいます。
      Aさんが本当に好きなのはBさんの知り合いのCさんです。
      Cさんの話をBさんから聞くために、AさんはBさんと一緒にいます。
      この状況から、抜け出せない時のAさんの気持ちを求めなさい」

茉莉   「つらい」

和泉   「正解」

茉莉   「……つらいね」

和泉   「……うん」

茉莉   「……私に、何かできることある?」

和泉   「……」

茉莉   「ないよね……」

和泉   「今、してもらってる」

茉莉   「……一緒に飲んで?」

和泉   「うん。
      茉莉と、変わらない日を過ごしているってことが、
      私にとってすごく癒しになるから」

茉莉   「……そうなの?」

和泉   「ツライ恋してると、どうしたって逃げたくなるじゃない。
      でも、こうやっていつもどおりに集まって話してお酒飲んでるとさ、
      ああ、私いつもどおりじゃん、大丈夫じゃん、って……
      まだ頑張れる、頑張ろうって……前向きになれるんだぁ」

茉莉   「……それはすごくわかる」

和泉   「茉莉には失礼な話だとは思うけどね」

茉莉   「そんなことないよ」

和泉   「ふふ。
      私達、お互い様だね」

茉莉   「そうだね」

和泉   「だからこうやって仲良くいられるんだよね」

茉莉   「うん」

和泉   「……よし。ワインもう一本あけちゃおう」

茉莉   「えっ?
      お酒もうないんじゃなかったの?」

和泉   「特別な日にあけようと思って取っておいたやつ、あけちゃう!!
      もう一本飲みつつさ、お互い、愚痴も、惚気も、いっぱい吐き出そうよ」

茉莉   「うん!!!
      介抱しなくてもいいよ、和泉が酔っぱらってもいいからね!!」

和泉   「おお?
      この私を酔い潰せるとでも??」

茉莉   「酔い潰れてもいいよってだけで潰そうとはしてないから!!」

和泉   「飲み比べなら受けて立つぞ??」

茉莉   「なんでそう戦闘態勢なのよーう」

和泉   「(ワインを飲む)あーーーっ好きだーーーーっっ」

茉莉   「好きだーーーーーっっ」

和泉   「浮気相手くらい、いくらでもなってやるから、あの人の話聞かせろーーー!!」

茉莉   「LINE既読遅いんだよ馬鹿ーーーーーーーー!!」

和泉   「諦められないんだよーーーーーーーーーー!!!」

茉莉   「寂しいんだよーーーーーーーーー!!!」

和泉   「苦しいんだよーーーーーーーーー!!!」

茉莉   「このまま別れちゃうのは嫌だよーーーーーー!!!」

和泉   「こっち向いてよーーーーーーーー!!!」

茉莉   「戻ってきてよーーーーーーーー!!!」

和泉   「私ここにいるんだからーーーーーーー!!!」

茉莉   「待ってるんだからーーーーーーー!!!」

和泉   「大好きなんだよーーーーーーーーーー!!!」

茉莉   「大好きなんだよーーーーーーーーーー!!!」

和泉   「…………近所迷惑かな」

茉莉   「いいんじゃない、たまにはさ」

和泉   「いいよね、たまにはね……、……」(涙ぐむ)

茉莉   「……つらいよね……、よしよし……」

和泉   「茉莉ぃ……つらいよ……」

茉莉   「……好きな人は、脈全然ないの?」

和泉   「うん。……たぶん、ない」

茉莉   「……それでも別の人と、しかも自分を大切にしない人と抱き合うの、
      嫌じゃないの?」

和泉   「……いいの」

茉莉   「……私は、やだな。……私の大事な親友なんだから。
      大切にしてほしいもん」

和泉   「……ありがと」

茉莉   「……そんな男やめて、私にしなよ」

和泉   「あはは、イケメンやり返されたね」

茉莉   「……柄じゃないかな?」

和泉   「んーん、ときめいた」

茉莉   「やったっ!
      ……キスでもしとく?」

和泉   「いいよ?」

茉莉   「んーーーーっ」(軽くキス)

和泉   「……女の子の唇って、不思議だよね」

茉莉   「うん。知らない男とキスするのは死んでもごめんだけど、
      女の子だったらだいぶハードル下がるよね、なんだろうねこれ」

和泉   「同じ女だからこその安心感?」

茉莉   「あーそうかもねぇ」

和泉   「浮気じゃないもんね、これ」

茉莉   「うん、スキンシップ」

和泉   「うん、スキンシップ(口づける、キスの濃さはお好みでどうぞ♪)」

茉莉   「(唇が離れて)……あは、濃いスキンシップだなーー」

和泉   「だって私達じゃない」

茉莉   「そうだねっ」

和泉   「……ほんと、恋って難しいや。
      親友でいる方がよっぽど楽」

茉莉   「ほんと。彼氏といるより、親友といる方がいいや」

和泉   「ねー」

茉莉   「ねー」




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