かぐや姫VS桃太郎 仁義ある戦い!

作:早川ふう / 所要時間 25分 / 比率 3:2

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2014.05.05.


【登場人物紹介】

かぐや
  言わずと知れた「かぐや姫」の主人公。
  可愛い美少女だが、強かでたくましい。
  劇中で「まんが日本昔ばなし」のOPとその替え歌を歌います。要確認!

桃太郎
  言わずと知れた「桃太郎」の主人公。
  しかしきび団子を食べていないせいかイマイチ弱い。趣味はインチキ占い。
  劇中で、まんが日本昔ばなしのOPの替え歌と
  北斗の拳主題歌「愛をとりもどせ」を歌います。

おじいさん
  言わずと知れた、昔話によく出てくるおじいさん。
  口は悪いがノリはいい。歌わないという意味ではこの物語で唯一安全。

おばあさん
  言わずと知れた、昔話によく出てくるおばあさん。
  口は悪いが実は乙女。
  劇中で、まんが日本昔ばなしのEDを歌います。要確認!

語り手
  ナレーターなのに語らせてもらえない。不憫。負けないで。
  ラストにアドリブがあります。頑張って!


【配役表】

かぐや・・・
桃太郎・・・
おじいさん・・・
おばあさん・・・
語り手・・・



語り手   「(後ろを向いて掌に人の文字を書いている)
       ……人、人、人……ごっくん。よし、わたくしは大丈夫、大丈夫だ……
       (前を向いて)えーーーーゴホン!
       皆様、初めての方は初めまして!
       二度目三度目の方はお久しぶりでございます。
       わたくし、なぜかまた物語の語り手を仰せつかりました、
       どうぞよろしくお願い申し上げます!」

全員    「(無言で拍手をする)」

語り手   「拍手!? えっ、拍手?! 野次でも茶々でもない………
       こ、これは大丈夫か、大丈夫なのか!!
       う、嬉しいッッ、わたくし頑張る!!!
       では、始めさせていただきます!」

全員    「(無言で拍手をする)」

語り手   「昔々のことじゃった……。
       ある村に、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしておったそうな」

かぐや   「♪ぼうや〜〜よい子だねんねしな〜〜〜
        今も昔も変わりなく〜…」(♪まんが日本昔ばなしOPを忠実に綺麗に歌う)

桃太郎   「♪ぼうや〜〜よい子だ金出しな〜〜〜
        いーくらと言わず財布ごと〜」(♪上記替え歌)

語り手   「だあああああああ!!!!!!
       最初! 最初はいい! 最初のはまだいいけど!!!
       Why!? どうして!? なぜ替え歌!?」

桃太郎   「え、いいだろ別に楽しいじゃねーか」

語り手   「よくないですよ!
       これは童話、しかも日本の昔話ですからね。
       そういうおかしな替え歌は歌っちゃいけません!
       わかりましたか!?」

桃太郎   「何で最初に歌った女はよくて僕はだめなんだよ!
       贔屓だ贔屓! いいのか語り手がそんなんでー!」

かぐや   「それはしょうがないわよ。
       可愛い女の子と、鼻水たらしたガキとどっちがいいかって、
       わかりきってるじゃない?」

桃太郎   「誰がガキだ誰が!」

語り手   「ちょっと二人とも喧嘩はやめなさい喧嘩は!」

かぐや   「そういえば、こんなのもあったわね。
       ♪ぼうや〜〜よい子だ金出しな〜〜〜
        金がないなら ケツを出せ〜」(♪上記替え歌)

桃太郎   「あははは!! こえーーーー!!」

語り手   「うおおおおおおおおおおおおい!!!!」

かぐや   「ウケたのに、何で止められたの?」

桃太郎   「そこは、『アッー♂』って言えよノリ悪いな」

語り手   「まって。まって。どうしてそれ歌ったの!?」

かぐや   「さっき怒られなかったから歌ったの」

語り手   「じゃなくて、どうして二人がそういうネタを知ってるの!?」

桃太郎   「ネタ? 替え歌なんて子供の常識だろ」

語り手   「常識っ!? そうなの?!
       くっ……わかりました。
       ツッコミを入れるばかりではなく、わたくしも時には大人にならねば!
       はい注目! いいですか二人とも!
       わたくしが語りをしている時は、歌を歌わない!
       ちゃんとお話を聞きましょうね!? わかりましたか?」

かぐや   「はーい!」

桃太郎   「へーい」

語り手   「ほーら、わたくしだってやればできるんです♪
       それでは気を取り直して。
       ……昔々ある村に、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしておったそうな。
       ある日、おじいさんは山へシバ刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけました」

おばあさん 「いつまで寝てるんだい! さっさと支度して仕事しろジジイ!」

おじいさん 「なんだとこのババア!
       てめぇがくそまずいメシを食わせるから吐き気がすんだよ!
       少しはまともなメシを作りやがれってんだ!!!」

おばあさん 「だったら食べなくて結構だよ!!」

おじいさん 「俺を飢え死にさせる気か!」

おばあさん 「大体なーにが吐き気だ、ただの胃もたれのくせに!
       大飯食らいは若い頃から変わりゃしない!
       もう年なんだから気をつけろっていつも言ってんだろうが!」

おじいさん 「年寄り扱いするんじゃねぇ! 俺はまだ若い!」

おばあさん 「だったらさっさと仕事に行ってきな!
       こっちだって暇じゃないんだからね!!」

おじいさん 「ああ言われなくても行ってやるさ!
       山ほど稼いでくるから、煮っころがし作って待っとけよ!」

語り手   「……仲良く、暮らして、いますね、ある意味ね、きっとね……。
       はいっ、きっとこのご夫婦は、こうやって仲良く暮らしていたんでしょう!
       そういうことにしておきます。
       もうこの作者の童話シリーズですから、原作とイメージが変わるのはデフォ。
       そう思わないとやってられません!」

おじいさん 「さて山へ来たが、うーむ……ここいらの木の枝は取り尽くしてしまったし、
       あっちの竹林の方に行ってみようか…」

語り手   「は!? 竹林?! おじいさんが、竹林……!? あれっ?!」

おじいさん 「おや!? あんなところに光り輝く竹が!?!?」

語り手   「川に洗濯に行ったおばあさんは?!
       竹ってそうなっちゃうよねえそうなっちゃうよ!?
       っていうか、そっかーー!! 最初にあの二人が出てきた時点でこれは既定事項じゃないですか!
       気付かなかったわたくしが悪いってオチ!? うそーーーーーん!!!」

おじいさん 「人が真面目に仕事してんのに何を外野で叫んどるんじゃ! 静かにせんか!」

語り手   「うっ……すみません。でもでも!」

おじいさん 「おおっ……この光り輝く竹は、なんと美しいことじゃろう!
       これを切って売れば、大層な金になるに違いない!」

語り手   「本音だだ漏れ!!!! いや素直でとてもよろしい! そういうことでしょう!!
       おじいさんは、その光り輝く竹を、きーりーまーしーたっ」

おじいさん 「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)!!!!!!!!!!」

語り手   「えええええ!?!!??
       まさかの飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)!?
       おじいさんが奥義会得してるの!?!?
       まさか初代の比古清十郎(ひこせいじゅうろう)っておじいさんだったの!?」

おじいさん 「……ふっ。またつまらぬものを斬ってしまった」

語り手   「石川五ェ門まで……一体いくつネタを突っ込んでくるんだこの人は!」

おじいさん 「技は三千世界の方がよかったか?」

語り手   「いやそれも問題ありまくりです!!!」

かぐや   「……この語り手、まったくナレーションしてないんだけど」

語り手   「はっ!!! そういえば!!!!
       くっ……まだだ。まだ終わらんよ……!!!
       えー……おじいさんが切り落とした竹の中からは、小さくて可愛い女の子が出てきました」

かぐや   「……あ……」

おじいさん 「おーーー!? こーーりゃめんこい子だべ!!!!」

語り手   「訛った!?」

かぐや   「いらっしゃいませ。ご指名ありがとうございまァす、かぐやで〜っす☆」

おじいさん 「君写真より可愛いね」

かぐや   「やっだー! お上手なんだからぁ♪」

語り手   「だあああああああああああああああああああ!!!!!!!!
       どこのキャバクラだよ!!!
       これ昔話だからああああああああああああああああ」

おじいさん 「じゃ、君のこと連れて帰っちゃおうかな〜っ」

かぐや   「えっいいんですか!? ありがとうございますぅ!」

語り手   「……なんかやりとりがちょっとあれではありますが、、
       兎にも角にも、おじいさんは、光る竹から出てきたかぐやと名乗る少女を
       家へと連れて帰ることにしたのでした!
       もーツッコミなんかしてやらないもんねーっだ!
       一方その頃、川へ洗濯へ行ったおばあさんは……」

おばあさん 「洗濯ってのはほんっと疲れるねぇ!
       あー腰が痛いったらありゃしないよ!!!」

語り手   「その時、川上から、大きな桃がどんぶらこ〜どんぶらこ〜と流れてきました。
       はっはっは! やっぱそうなるよね! わかってたよー!!」

おばあさん 「おや、大きな桃が流れてきたよ、こいつは儲けもんだね!!
       持って帰ってあのクソジジイと一緒に食べますか!
       よっこらせっと!!!!
       ずいぶんと大きくて重いねぇ……腰がもっと悪くなっちまうよ!
       これで甘くなかったら許さないからね!!!!」

語り手   「おばあさんは、その桃を家に持って帰ることにしました。
       うーん……。おじいさんは、かぐや姫を、おばあさんは桃を。
       主役が二人もいて……これから一体どちらに話を進めればいいんでしょう!?」

おばあさん 「ただいまあ」

かぐや   「きゃっ、こんな素敵な着物いただいちゃっていいんですかぁ!?」

おじいさん 「いいのいいの! いやーー若い子が着ると似合うなー、可愛いよー!
       もう年甲斐も無く襲いたくなっちゃうじゃないかあ〜」

かぐや   「えーっ、年甲斐も無くってそんなぁ〜まだまだお若いじゃないですか〜」

おじいさん 「俺のムスコはまだ現役だからな、さあじっくりと塩梅をみてやr」

おばあさん 「北斗百裂拳! アーーーたたたたたたたたたたたたたたたォオワター!!!!!!」

おじいさん 「あべし! ひでぶっっ! ………な、なぜお前が……その技を……」

おばあさん 「お前はもう、死んでいる」

語り手   「死んじゃったら話進みません!!!
       おじいさんは生きてます生きてます生きてます!!!」

桃太郎   「♪YOUはSHOCK 愛で空が〜落ちてくる〜〜」(♪北斗の拳主題歌「愛をとりもどせ」)

語り手   「はいそこ歌わないいいいいい!!!!」

おばあさん 「こンの浮気者が! いい年して若い娘さん家に連れ込んで何してんだい!!」

おじいさん 「いや、何も! まだ何もしてないです! 誓って! はい!」

おばあさん 「こちとらあんたと食べようと思って重い桃をここまで運んできたってのに……
       あんたなんかの為に苦労した自分が馬鹿みたいだよ!」

おじいさん 「俺もお前にいい土産があるんだ! だから機嫌を直してくれ!」

おばあさん 「土産? なんだい?」

おじいさん 「ほら見てみろこの光り輝く黄金の竹を!!!」

おばあさん 「おやまあ! どうしたんだいこれ!」

おじいさん 「裏の竹林で見つけたんだ。いい値で売れるだろうと切ってきたんだが、
       そしたらその竹の中にこの娘さんがいたんだよ!」

かぐや   「こんにちはおばあちゃん☆」

おばあさん 「竹の中に? この娘さんが?
       つくならもっとマシな嘘にしろこの色ボケジジイ!」

おじいさん 「下手(したて)に出てりゃいい気になりやがってこのババア!!!」

桃太郎   「♪俺との愛を守るためぇ お前は旅立ぁちぃぃぃ
        明日をぉぉ 見失ったああああ」(♪北斗の拳主題歌「愛をとりもどせ」)

語り手   「いや見失っちゃだめだろ! この場合見失ったら話進まない!!!!
       出番まであと少しだから歌わないでお願い!!!」

かぐや   「喧嘩はよくないですよー!
       二人とも〜仲良くしてくださいっ!」

おじいさん 「むむ……」

かぐや   「あ、じゃあ私桃切りますよー!
       せっかくおばあちゃんが持って帰ってきてくれたんですから!」

おばあさん 「ああ、そりゃすまないねぇ」

かぐや   「お台所お借りしまーす!」

おばあさん 「あんな器量良しの娘さんが……本当に竹の中にいたのかい?」

おじいさん 「ああ本当だとも。明るく振舞ってはいるが、なにか事情でもあるんだろうかねえ」

かぐや   「きゃあっ!!!!」

おじいさん 「どうした!?」

かぐや   「桃を切ったら……中から……中から男の子が!!!!!」

桃太郎   「ご指名ありがとうございます、桃太郎でぇっす!」

かぐや   「おい。さっき私が使ったネタで登場すんなよ、ちったぁ工夫しろボケ!」

桃太郎   「ちっ……じゃあ……ほ、ほんぎゃー! ほんぎゃー!」

おじいさん 「そんなでっかいナリして、今更赤子の真似をしてもねえ。
       あの桃の中にどうやって入ってたんだか……」

語り手   「いや、それを言ったらかぐや姫だって同じ理屈だと思うんですが」

桃太郎   「なんで出てくるだけでこんなに言われなきゃいけないんだ!!!
       どうすればよかったんだよおおお!」

かぐや   「情けない男ね」

桃太郎   「冷たい女だな……キンキンに冷えてやがる……悪魔的だなァァ!!」

かぐや   「かぐやが、教えてあげる。
       私たちみたいな特殊な境遇の子供はね、チャンスを逃しちゃだめなの。
       目の前に幸せがあったら、何がなんでも手に入れなきゃ。
       たとえ他の誰かを蹴落としてでもね!!」

語り手   「なんて危ない思想の持ち主なんだこのかぐや姫……」

桃太郎   「なるほど。……確かにそうだな!」

語り手   「ああああ桃太郎納得しちゃったよ……」

おばあさん 「語り手は完全にリアクション担当ってカンジだねぇ」

おじいさん 「ま、仕方がないだろう。この状況じゃ」

おばあさん 「私らだってどうすりゃいいかわからないものね」

おじいさん 「語り手ってのも大変な商売だなぁ」

おばあさん 「そうだねぇ……」

語り手   「いやいや、しょうがないじゃないですか、もうこちらは何もできませんよ!
       大体主役が二人出てきてる時点で、話も何もあったもんじゃないんですから!
       語りようがないんです! だからわたくしは悪くないんですぅーーーっ!
       作者が悪いんですー! ぜーんぶ作者が悪いんですーーーう!」

おじいさん 「……あー、そうだね。あんたはよくやってくれてるよ」

語り手   「そんな哀れんだ目で見ないで下さい!」

おばあさん 「さて……それにしてもこのあとはどうなるのやら……」

語り手   「そうですよ……ほんとどうしよう……。
       ここで作者に恨み言言ったって、
       わたくしのこの危機的状況がどうにかなるわけじゃないし……」

かぐや   「馬鹿ね! こういう時に人間としての真価が問われるのよ!
       ピンチをチャンスに変えなきゃ!
       ……って言っても、あなたには無理かしらね」

語り手   「ううう……」

桃太郎   「"あきらめないで"!」

かぐや   「そこは真矢ミキよりも安西先生の方がよかったんじゃない……?」

桃太郎   「うるっせぇよ!」

かぐや   「さてこれからどうしようかしら。
       どっちの話に進むべきか決めないといけないわけだし、
       主役は二人もいらないものね!」

桃太郎   「そうだな。僕かお前か、どっちが生き残るか勝負しようじゃねぇか?」

かぐや   「ま、あたしの勝ちは決まったようなものよね!
       おじいちゃんはあたしの味方だし! ね〜☆」

おじいさん 「ね〜☆」
桃太郎   「そ、そっちがそう来るならこっちだって!
       おばあさん! ……いや、……富子!」

語り手   「えっ?! おばあさんの名前、富子?! 富子なの!? 初耳ですよ?!」

おばあさん 「な、なんで私の名前を知ってるんだい?!」

語り手   「しかも正解してるんだ!?!」

桃太郎   「僕には、何でも見通せる力があるんです。
       けれど僕だけの力だと、とてもあやふやなイメージしか見えません。
       差し支えなければ、手を握っても構いませんか?
       そうするともっと明確に見ることができるんです」

おばあさん 「え、ええ……」

桃太郎   「ありがとうございます。では失礼して……。
       ……美しい手だ」

おばあさん 「や、やめとくれよ、こんなしわくちゃでがさがさの手……」

桃太郎   「日々の家事をしっかりやっている証拠じゃありませんか。
       家だって綺麗に片付いている。
       おじいさんの為に、しっかりと家を守ってる、働き者の素敵な手です」

おばあさん 「そんな……恥ずかしいよ……」

おじいさん 「あいつ、ババアの名前をどうして……」

語り手   「……あっ、あれじゃないですかっ! あそこにたたんである洗濯物!
       ハンカチにトミコって刺繍してある!!」

かぐや   「鋭い観察力と、コールド・リーディング、敵ながら見事だわ」

桃太郎   「……富子さん。……貴女から、痛みを感じます……。
       背中に、腰も……とてもお疲れのようですね」

おばあさん 「ええ……まぁ年ですから……力仕事もだいぶきつくなってきてねぇ」

桃太郎   「そうでしょう。僕にもその痛みが伝わってきます。
       おつらいですね……それでも日々しっかりと仕事をなさっていて立派なことですよ」

おばあさん 「……そんな……優しい言葉をかけてもらえるなんて…っ…! うううっ」

語り手   「なっ、おばあさんが泣いた!?」

かぐや   「だまされちゃだめよ! この年齢の人なら誰だって体にガタがきてるわ。
       誰にでもあてはまることを、それらしく言ってるだけよ!!」

おじいさん 「そ、そうか! 確かに!」

桃太郎   「失礼なことを言わないでいただきたい!
       僕は富子さんの痛みがわかるだけですよ。
       今一番痛いのは、……その純粋な心だ、そうですね?」

おばあさん 「……うっううううううううううううううわあああああああああああああん!(号泣)」

桃太郎   「富子さん。僕が貴女の心を癒します。
       貴女の痛みをわけてください。
       僕は貴女の力となりたいのです」

おばあさん 「ああああああ……嬉しい嬉しいよおおおおおおおおお…!
       桃太郎……これからもずっと私のそばにいておくれ………!!!!」

桃太郎   「………フッ……計画どおおおおおり!」

かぐや   「たった一人味方を作れたくらいで、いい気にならないでよね!」

桃太郎   「これで勝負は五分(ごぶ)だ!
       さっきまでの勝気な君はどこにいったんだろうねえ、はーーっはっはっはっはっは!」

かぐや   「くっ……! どうしよう、おじいちゃん!
       このままだと私、大好きなおじいちゃんと一緒にいられないわっ!」

おじいさん 「そ、それは困るうっ! 困るんだけどぉっ!
       でも……あんたにゃ悪いが、あんなクソババアでも俺にとっては大事な嫁……
       桃太郎ごとき若造に奪われるわけにはいかんのだよ……!」

かぐや   「ええっ?!!」

語り手   「おおっと急展開?!
       かぐや姫をさしおいて、まさかのおばあさんを賭けて、男の決闘のはじまりか?!」

おじいさん 「桃太郎……俺の富子を返してもらおうか…」

桃太郎   「……そんなに怖い顔をなさらないでください、おじいさん」

おじいさん 「なにぃ?」

桃太郎   「僕は貴方から富子さんを奪うつもりはありませんよ。
       僕は……貴方達の息子として、ここでお二人の助けになりたいのです」

おじいさん 「息子……だと……!?」

桃太郎   「僕の占いでは、この家には貴方達ご夫婦二人しか住んでいませんね?
       お子様に恵まれなかったのではないですか」

おばあさん 「……そ、そうなんだよ」

おじいさん 「そりゃ……息子ができるってんならば……嬉しいけども……」

桃太郎   「じゃあ決まりだ。僕が精一杯親孝行しますからね……。
       ふっふっふ。
       勝負あったなかぐや! この物語の主人公は、僕だ!!!!」

かぐや   「だ、だったら私だって娘になるわよ!!!
       それならいいでしょう!??!?」

桃太郎   「それでもお前どうせ月に帰るんじゃねーか!
       親不孝前提のお前には、もとから勝ち目なんざねえんだよ!!」

かぐや   「くっ……このままでは主役を奪われてしまう……!
       考えるのよかぐや! 私はピンチをチャンスに変えられるわ!
       私ならきっとこの状況を打破できる……!」

桃太郎   「はっ、今更何をやっても無駄だね。
       ほら、さっさと月に帰っちまえ! 迎えの電話をしてやろうか!?」

かぐや   「迎え……?
       ……それだあああああああああああああああああああああああ!!!!」

おばあさん 「どうしたんだいそんな大声を出して」

かぐや   「桃太郎、その耳の穴かっぽじってよーくお聞きなさい」

桃太郎   「はあ?」

かぐや   「あんたが退治すべき鬼は、鬼ヶ島じゃなくて、月にいるわ!!」

桃太郎   「なっ!? いきなりなんだよその設定!?」

かぐや   「あんたが鬼という名の月の使者を退治すれば、
       私はずっとここにいられるのよ!
       あんたも桃太郎としての話がすすめられるし、一石二鳥!!
       どやああああああああああああ!!!」

語り手   「そんな無茶なあああ〜〜〜〜……」

おじいさん 「いや確かに無茶な設定にはなるが、いい案だぞ?」

おばあさん 「桃太郎とかぐや姫。それぞれ話も完結するし、みんなハッピー。
       こりゃ名案だよ!!」

語り手   「しかしそれでは話が変わってしまうじゃないですか!!」

桃太郎   「どーせ最初から主役が二人出てきた時点で、滅茶苦茶になるのわかってたんだろ?」

語り手   「それはそうですけど!!!!」

おばあさん 「じゃあこれでいいんじゃないかねぇ!
       一気に娘と息子ができて、老後も安泰。
       幸せでまた泣けてしまうよ……うおおおおおおおん!(号泣)」

桃太郎   「涙をふいて、富子さん。
       僕達がずっとそばにいるからね」

かぐや   「ずっと仲良く暮らしましょう! 二人とも長生きしてね!」

おじいさん 「ありがとうよ……!!」

語り手   「……えええ……じゃ、じゃあ……桃太郎&かぐや姫、これにて、終幕、なの?
       ほんとにこれでいいのかなぁ……」

おばあさん 「♪くまのこ見ていたかくれんぼ〜 おしりを出したこ いっとうしょう〜
        夕やけこやけで またあした〜 ま〜たあ〜した〜〜」(♪まんが日本昔ばなしED)

おじいさん 「何でいきなり歌いだしたんだ」

おばあさん 「昔話の〆といったらこれだろう?」

桃太郎   「素敵ですよ富子さん!」

おばあさん 「そうかい? 照れるねぇ」

桃太郎   「富子さんの新たな魅力発見ですよ」

おばあさん 「うふふ、いやーそんなもっと言って☆」

おじいさん 「ぐぬぬ……じゃあ俺も歌うぞ!!」

かぐや   「まぁ素敵! おじいちゃんのーちょっといいとこ見ってみったいー☆」

語り手   「もう歌いません! 終わりました! 終わりました!
       劇は終わりですうううううううううううううううう!!!!!」

おばあさん 「しらけること言うんじゃないよ!」

おじいさん 「語り手なんだからちったぁ空気読めよなぁ」

桃太郎   「ま、だからずっとこういう役回りなんでしょう」

かぐや   「なるほどね、納得だわ」

語り手   「ち、ち、ちくしょおおおおおおおおおおおお!!!!
       そんな侮辱されたままで終われるかってんだあああああああああああ!!!」

おばあさん 「お、言ったね? 今終われないって言ったね?」

おじいさん 「確かに言ったな」

桃太郎   「ちゃんと聞いてました!」

おばあさん 「それでは! そんな語り手さんの! 劇の〆に相応しい一曲まで!
       3、2、1、キュー!」

語り手   「☆♂♀◎!!!!!」(無理だと叫んでも何か歌っても、何でもいいです。どうぞ渾身の一節を!)

かぐや   「(適当にぶったぎって)ということで、めでたしめでたしー!」

語り手   「ちょ、誰か拾ってよ! ちょっと! おいいいいいいいいいいい!!!!」









Index