赤ずきんと愉快な仲間達(15禁的な意味で)

作:早川ふう / 所要時間 25分 / 比率 3:2

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2013.11.21.


【登場人物紹介】

赤ずきん
  いわずと知れた主人公。赤い頭巾をかぶった可憐な少女。ただしジャニヲタでドS。

ママン婆
  赤ずきんの母と祖母の兼役を担う。モンスターペアレント。ただしジャニヲタでドM。

オオカミ
  狼なのに気弱な性格で、いいように振り回されてしまう可愛い男の子。
  劇中で、松崎しげるの「愛のメモリー」を歌います。

三太郎
  本業はサンタクロースらしいが、どうみても江戸っ子な一応猟師。歌が大好き。
  劇中で、kinki kidsの「ビロードの闇」を歌います。

語り手
  ナレーターなのに語らせてもらえない。自棄になってる。がんばって。


【配役表】

赤ずきん・・・
ママン婆・・・
オオカミ・・・
三太郎・・・
語り手・・・



三太郎   「ぶはっくしょーいべらぼうめぃ! 近頃寒いねぇ。
       おいらは、花のお江戸で子供たち相手の商売をやってる、
       サンタクロースの三太郎ってんだ。よろしくな!」

語り手   「ちょちょちょ! 待ってくださいよ!」

三太郎   「どうしたい、語り手さんよぉ!」

語り手   「わたくし、前回の時のようにはなるまいと、しかと肝に銘じてきたんです」

三太郎   「前回、ってぇと?」

語り手   「前回は【ラプンツェル】というお話だったんですが、それはそれはひどい目に遭いまして!
       けれど今回のお話は、かの有名な【赤ずきん】!
       ポピュラーな童話ですし、主人公は可愛いロリッ子!
       だから安心していたというのに……なぜ!!!
       なぜ貴方のようなイレギュラーな登場人物がいるのですかあ!?!」

三太郎   「イレギュラーって、サンタクロースは世界共通の仕事だろうに」

語り手   「そういう問題じゃないでしょう!
       サンタクロースの三太郎って、最早どこからつっこんでいいかわかりませんよ!」

三太郎   「おいらにも色々と事情ってもんがあるんだ、ケチつけてねぇでとっとと話を進めてくんな!」

語り手   「〜〜っ、わかりました。でも、わたくしの語りの邪魔だけは、しないでくださいね!」

三太郎   「おうおう、わかったわかった」

語り手   「えー、ゴホン!
       昔々あるところに、とても可愛らしい女の子がおりました」

三太郎   「ようじょ! ようじょ! つるぺたようじょ!」

赤ずきん  「ようじょ! ようじょ! つるぺたようじょ!」

ママン婆  「ようじょ! ようじょ! つるぺたようじょ!
       ……あの、これ何なの?」

語り手   「耐えろ耐えるんだ。これにツッコミを入れたら話が進まない!
       わたくしは今度こそ語り手の務めを全うしなければ……!
       えーーーーーある時!!!
       その女の子のおばあさんが、赤いビロードの布で女の子のかぶる頭巾を作ってくれました」

三太郎   「♪ビロードの闇に融けだす〜剥き出しになった愛情おおおおおおお」(kinki kids「ビロードの闇」サビ)

赤ずきん  「キャー剛くうううううううううん!」

ママン婆  「光一いいいいいいいいいいいいいいいい!」

語り手   「無理!!!
       おい待てこらあああああああああああああああああああ!!!!!!
       お前ら何考えてんだああああああああああああああああああああ!!!!!!」

赤ずきん  「ママー、この人こわーい」

ママン婆  「ほんとやーねー、近づいちゃダメよ、赤ずきん。
       こっちいらっしゃい」

三太郎   「そんなに怒るこたぁないじゃないか。
       ちっとばかし古い曲だが、キンキの名曲!
       21枚目のシングルだァ、マイナーってこともないだろうに!」

語り手   「関係ないんだ、んなことはあ!!!!
       いいかお前らよーく聞け!
       これは、赤ずきん! 赤ずきん!! 童話の赤ずきん!!!」

赤ずきん  「剛くんかわいいのに」

ママン婆  「光一かっこいいのに」

語り手   「この時代、キンキなんざデビューしてないし、赤ずきんとお母さんがジャニヲタであるはずもない!!!
       こんな当たり前のことを説明しなければいけないんですかわたくしは!!!!!」

赤ずきん  「ああん? ジャニヲタの何が悪いっていうのよ」

ママン婆  「私たちは、良識と節度をもって応援しています。
       ツイッターで馬鹿なこと呟いて炎上するような、
       ごく一部の迷惑な輩と一緒にしないでください」

語り手   「だからそういう問題じゃあねえだろうがああああああああ!!!!!」

オオカミ  「あ、あの……そんなに怒らなくてもいいんじゃないですかね……。
       みんな、頑張って役作りをしているんですから……」

語り手   「オオカミさん……。
       そう言われましても、役とかけ離れた設定を認めるわけにはいかないんですよ……」

オオカミ  「それでも一生懸命なのにあんまりですよ……うっ……ふぇ……」

語り手   「なっ泣いたっ?!」

赤ずきん  「あーーーーーーっ!! 語り手がオオカミのこと泣かしたあ!!!
       いーけないんだーいけないんだーーーー、せーんせーに言ってやろーー!」

ママン婆  「ほんと仕方のない人ね、さっきから口調も荒いし。
       こんな人がそばにいたら教育に悪いわ。
       教育委員会に厳重に抗議して、語り手を変えていただきましょう」

語り手   「モンスターペアレントおおおお!!!
       演者交代だけは勘弁してくださいいいいっっっ」

ママン婆  「ではオオカミに謝罪を」

語り手   「えっ……」

赤ずきん  「悪いことしたら、ゴメンナサイするんだよ?
       そんなことも知らないの?」

ママン婆  「こんな小さな子供ですらわかることを、大人の貴方がまさかおわかりにならない……?」

語り手   「そんなことは……。ち、畜生っ……。
       オ、オオカミさん。スミマセンデシタ……」

赤ずきん  「謝る時は、頭を下げなきゃ」

ママン婆  「そうね。誠意を見せなさい、誠意を」

語り手   「……大変申し訳ありませんでしたああああああああああああああああああ!!!!!!」

三太郎   「おっ、土下座たあ、男らしいじゃないか」

オオカミ  「そんな……僕の方こそすみません、気が弱くて……。
       ご迷惑おかけしました。あの、頭をあげてください」

語り手   「な、なんてお優しいオオカミさんっ!
       でも、悪役のはずのオオカミが、こんな気弱なピュアボーイでいいのでしょうか……」

三太郎   「それはそれさ。おいら達で出来る精一杯をやりゃあいいんだ。
       よく言うだろう? 【みんな違ってみんないい】ってさ」

語り手   「そ、そうですね……!
       普通の赤ずきんにはもうならないと思いますが、
       頑張ってまとめていきたいと思いますっ」

三太郎   「その意気だ!
       さあ、こちとら江戸ッ子、しんみりとした雰囲気は性に合わねぇ!
       とっとといくぜ!」

語り手   「はいっ!!!!
       えーーー、おばあさんが作った赤い頭巾がとても女の子に似合っていたので、
       みんなは女の子の事を、『赤ずきん』と呼ぶようになりました。
       ある日のことです」

ママン婆  「赤ずきん、赤ずきん」

赤ずきん  「はいママ」

ママン婆  「あのね、おばあちゃんが病気になってしまったんですって」

赤ずきん  「ええっ、おばあちゃんが!?」

ママン婆  「だから様子をみてきたいの。
       でもママはこれから地区役員の会議に行かないといけなくて……。
       お前、ひとりでおばあちゃんの家までお見舞いに行ける?」

赤ずきん  「ひとりで……?」

ママン婆  「そう。ひとりで」

赤ずきん  「……はじめての」

ママン婆  「おつかいよ!」

赤ずきん  「がんばるー!!!」

三太郎   「あーっと残念、おいらのレパートリーにない曲だッ」

オオカミ  「今度練習してきかせてくださいね」

語り手   「誰もテーマ曲歌えなんて言ってませんから!」

赤ずきん  「で、お見舞いに何を持っていけばいいの?」

ママン婆  「このケーキと、ワインを持っていって……って言うところだけど。
       病気のおばあちゃんに、甘ったるいケーキとお酒を差し入れるなんて、
       こんなものがお見舞いになるのかしら。
       それに未成年にアルコールを持たせるのも危険ね。
       ここは変更しましょう」

赤ずきん  「ヨーグルトとポカリと冷えピタ!」

ママン婆  「素晴らしいわ赤ずきん、さすが私の子ね!」

語り手   「あああ、その時代にないものばかり!」

三太郎   「まぁまぁ固いこと言うなって」

オオカミ  「消化のいいものを贈るのが一番ですよ」

三太郎   「それにしても、原作は嫁姑の仲でも悪かったのかねぇ。
       こんな嫌がらせのような差し入れをしようとするなんざ、気が知れないよ」

オオカミ  「ほんとそうですよねぇ」

語り手   「そういうことじゃなくて……。
       ううう、気にしないようにするってのもストレスですっ。
       そ、そんなわけで、赤ずきんは、
       歩いて三十分くらいのおばあちゃんの家まで、出かけることになったのです」

ママン婆  「ポカリだけは、途中のコンビニで買っていってね。
       はいこれお金。落としちゃだめよ」

赤ずきん  「はーい」

ママン婆  「それ以外の道草はだめよ。
       勿論知らない人についていかないこと、わかった?」

赤ずきん  「わかったー!」

ママン婆  「じゃあ気をつけていってきてね」

赤ずきん  「いってきまーす!」

語り手   「赤ずきんは元気よく出かけてゆきました」

三太郎   「あの母ちゃん、過保護な教育ママっぽいのに、よくひとりでお見舞いを納得したねぇ」

オオカミ  「そうですよね、あっ僕そろそろ出番なんてスタンバイしてきます」

三太郎   「おう、頑張れよ!」

オオカミ  「はい!」

ママン婆  「ふう。しばらくは裏から見守ることにするわ」

三太郎   「お、母ちゃんお疲れ!
       次は婆ちゃんの役もやるんだろ? 着替えなくて大丈夫かい?」

ママン婆  「ご心配どうも。出番まではまだ時間がありますので」

語り手   「さて、赤ずきんが近くのコンビ……お店に入ると、
       そこにはこわ〜いオオカミがいました」

オオカミ  「こ、こ、こんにちはっ、可愛い赤ずきんちゃんっ」

赤ずきん  「こ、こんにちは」

語り手   「ちっともこわくないですよっ? オオカミなのに!」

ママン婆  「しかもアレはどう見ても、
       片思いの子に話しかける女の子のようじゃない! オオカミなのに!」

三太郎   「可愛いじゃねぇか! オオカミなのに!」

ママン婆  「……ハッ!
       だ、だめよ、騙されては!
       赤ずきん! 男はオオカミなのよ気をつけなさいいいいいいい」

三太郎   「母ちゃん、そいつは古い歌の歌詞にもあってだね……」

語り手   「もう歌はいいですから!」

ママン婆  「落ち着かなきゃ落ち着くとき落ち着けば落ち着くのよあwせdrftgyふじこlp」

オオカミ  「あっあの、赤ずきんちゃん!
       ひ、ひとりでお買い物なんて、めめめ珍しいね!
       今日はお母さんは、ど、どうしたの?」

赤ずきん  「ママは今日用事があるからあたし一人なの」

オオカミ  「そっか、……ひ、ひとりでお買い物、大変じゃないかなっ」

赤ずきん  「ポカリ買うだけだし」

オオカミ  「重くない?」

赤ずきん  「平気。500のだから、あたしでも持てるよ」

オオカミ  「そう……。
       か、買い物のあとは、どうするの? よ、よかったら家まで送っていこうか!」

赤ずきん  「嬉しいけど、ごめん。この後おばあちゃんちにお見舞いに行くから」

オオカミ  「おばあちゃんち!? 赤ずきんちゃんが一人で!?」

赤ずきん  「そうよ」

オオカミ  「すごいなぁ、勇気あるんだね……僕と大違いだ」

赤ずきん  「あなたはオオカミなのに、ずいぶんと弱いのね」

オオカミ  「う、うん……。
       自分でもわかってるんだ、しっかりしなきゃだめだって……」

赤ずきん  「でも、……そういうのって、可愛いわよね」

オオカミ  「えっ!? 可愛いだなんてそんな……可愛いのは赤ずきんちゃんの方で……」

赤ずきん  「ふふ、本当に可愛いわぁ。
       ねえ、オオカミさん? ちょっとそこで二時間ほど休憩していかない?」

語り手   「ああああアウトォォォォオオオオオ!!!
       何言ってんだああああああああああ!!!
       赤ずきんが何ということを!!!!」

ママン婆  「まってく、道草はだめって言ったじゃないの。あとで叱らなきゃ」

語り手   「違う違うそこじゃない! 気にするべきところそこじゃない!」

三太郎   「じゃあどこを気にするっていうんでぇ?」

語り手   「赤ずきんが、きゅきゅきゅ休憩だなんて破廉恥な!!!!!!!!」

ママン婆  「破廉恥?
       貴方が何を想像しているのかによっては、処分の検討をはじめなければいけませんね」

語り手   「ええっ?! わたくしが悪いんですかあああああああ?!
       違うでしょ!? 悪いのってわたくしじゃないですよねぇ!?」

三太郎   「おいらに同意を求められてもねぇ」

オオカミ  「に、二時間も道草はさすがにまずいんじゃないかな?!」

赤ずきん  「平気よ。大丈夫、行きましょ」

オオカミ  「えっ!? えっ!?」

赤ずきん  「さ、早く早く」

オオカミ  「まって、ちょっと、赤ずきんちゃんっ、ほんとに行くの!? ねぇ!?
       わわわっ! 引っ張らないでえええええええ!!!」

語り手   「まさかの急展開!!
       これじゃあ法に触れるだろうとか、放送的にどうなんだとか考えたら負けです!!
       二人はぁ! 建物の中にぃ! 消えていったあああああああああ!!!
       ……こ、こんなんじゃ絶対まとまらない……。
       どうすればいいんだああああ…………」

赤ずきん  「……這いつくばって、足を舐めなさい。
       指の間まで丁寧にね?
       あら? 誰が手をつかっていいと言ったの!?
       悪い子!! ……どうやら縛ってあげなきゃ、わからないみたいねぇ!」

ママン婆  「なななななななんなのこれはあああ!?!??!?!?
       赤ずきん!? 赤ずきんがっ!! 嗚呼嘘よ、誰か嘘だと言って!!」

三太郎   「語り手さん、しっかりしろい。あんたが諦めたら、何もかも終わっちまうだろ」

語り手   「は、はい……、でも……」

三太郎   「仕方ねぇ。おいらが少ぅし力を貸してやろうじゃないか。
       あー、語り手の心が折れ、母ちゃんまでもが言葉をなくし、
       そして二時間がすぎた頃。
       建物の中から、憔悴しきったオオカミがひとり、
       よろよろと出てきて溜め息をついたのでした」

オオカミ  「あれは、何だったんだろう?
       ……夢? きっと悪い夢だよね……そうに決まってる……」

三太郎   「おいちょっとオオカミさんよぅ! あの建物の中で、一体何があったんで?」

オオカミ  「あんなに可憐で可愛い赤ずきんちゃんが……
       まさかあんな、じょ、女王様、なんて、そんなはずないんだそんなはずないんだっ!
       ふええええええええええええええええええん!!!!」

三太郎   「訊いたおいらが悪かった!
       もう何も言わなくていい。あんたはよく頑張ったよ」

オオカミ  「ぐすっ、ひっく、ふぇえん……」

三太郎   「赤ずきんちゃんはどうしたんだい?」

オオカミ  「多分、まだ、寝てます……」

三太郎   「そうかい。
       とりあえず、あんたは、話の流れを戻すことはできたんだ。
       気をしっかり持つんだ。……頑張れるかい?」

オオカミ  「が、がんばり、ますっ」

三太郎   「よし! しっかりな!
       ……さあ語り手さん、あんたも泣いてないで話を進めるんだよ!
       母ちゃんも! 出番だろう!? さっさと婆ちゃんにならないと!」

ママン婆  「あっ……そ、そうだったわね!!」

語り手   「わ、わたくしもがんばりますっ。
       えー、なんだかんだとありましたが、
       何とか赤ずきんちゃんの足止めに成功したオオカミは、
       おばあちゃんの家に先回りするのでした」

オオカミ  「やっと着いたぁ……。
       送っていただいて助かりましたよ。
       僕、方向オンチだから、無事にたどりつけないかと思ってました」

三太郎   「いいってことよ。困ったときはお互い様だ。
       おいらは商売柄ナビを手放さないんだ。迷子になったらいつでも頼ってくんな」

オオカミ  「ありがとうございますっ。
       えーっと、ここ、ですね。
       ごめんくださーい!」

ママン婆  「どなた?」

オオカミ  「えと、お見舞いに来ました、赤ずきんですっ」

ママン婆  「まぁ赤ずきんかい? 遠慮しないで入っておいで」

オオカミ  「はーいお邪魔しまーす! ……えっ!?!??!」

ママン婆  「いらっしゃい。待ってたのよ?(色っぽく)」

オオカミ  「ななななななななんで……」

ママン婆  「あら赤ずきん、どうしてそんなに怯えてるの?」

オオカミ  「だだだだだって、どうしてそんな格好を!?
       おばあちゃんは病気で寝てるんじゃ???」

ママン婆  「そうよ? ……私はね、赤ずきんに構ってもらえなかったから病気になってしまったの」

オオカミ  「えええええええええええええええ!?!??!」

語り手   「……これはわたくしが解説をしていいところではないです。
       今の様子をお伝えしようと思ったら、思いっきり放送コードにひっかかります。
       かといって、止めることもわたくしにはできません。お許し下さい」

三太郎   「んなこと言われたって気になる人はいるんじゃないのかい?」

語り手   「……とても、妖艶です」

ママン婆  「外野がごちゃごちゃうるさいわね。
       そうそう、ちょうどいいから言っておくわ。
       リスナーさんにはわからないでしょうけど、
       私の役名、【ママン婆】なのよ。わかる?ママン婆!
       ヤマンバみたいじゃない!?
       お母さんとおばあちゃんの二役を兼ねるからって、しゃれたつもりなのかしら!?」

語り手   「ひいっ……そそそうですね! 言うに事欠いてママン婆はないですよね!」

三太郎   「母ちゃんに、あ、いや今は婆ちゃんか。
       とにかく、こんな嫌がらせをしなくてもいいよなあ」

ママン婆  「いいえ! ……もっと。もっとよ! もっと酷く罵って頂戴!!」

語り手   「はあ!?」

三太郎   「なんだってぇ!?」

ママン婆  「私の隠れた願望を見事に叶えてくれたこと、感謝するわ。
       私は、人に蔑まれて悦びを感じる罪深きオンナ。
       赤ずきんが欲望のままに生きるのなら、
       私だって欲望のままに生きてもいいはず!
       さあ赤ずきん、いえ、貴方がオオカミだってことはわかっているわ。
       私を食べるおつもりでしょう?
       さあ、存分に食べて……!!!!」

オオカミ  「えええええっ!?!?」

語り手   「ええ、あの、先ほどの雰囲気を感じたときからこのオチはなんとなく見えてました……」

ママン婆  「オオカミ様ぁ〜! 早くぅぅ」

三太郎   「ドMの母ちゃんにドSな赤ずきん、か」

語り手   「わたくしにはもうどうすることもできません……」

三太郎   「羨ましいねぇ、親子どんぶりか……」

語り手   「そんな下品な単語をつかわないでください!
       貴方一応サンタなのに!! 子供の夢を壊す発言ダメ絶対!」

三太郎   「それを言ったらあんただって、童話の語り手ともあろう御人が、
       子供の夢を壊すようなこの状況で、何もしないでいいのかい?」

語り手   「ぐっ……よくないです……。
       でもわたくしに何ができますか!?
       この状況を止めることなどわたくしの力量では無理ですぅっ」

赤ずきん  「じゃああたしが止めるわ!!!!」

オオカミ  「赤ずきんちゃん!?」

ママン婆  「赤ずきん……。
       貴方の出番はまだ先でしょう? 何を勝手に出てきているの!」

赤ずきん  「出番なんて関係ないわ。あたしの可愛い奴隷に勝手に何をしているの!!」

ママン婆  「奴隷ですって? オオカミは私のご主人様なのよ!!??」

赤ずきん  「ご主人様ァ? 聞いて呆れるわね。
       一回も可愛がられていないのに、どうして主従関係が成り立つっていうのよ」

ママン婆  「黙りなさい!!!!」

オオカミ  「キャットファイトこわいですぅぅぅぅ」

赤ずきん  「ほら怯えてるじゃないの! いい加減にしてよね!」

ママン婆  「無理矢理モノにしたくせに、あんたがいい加減にしなさいよ!!!」

赤ずきん  「なんですってぇ!?!?!??」

三太郎   「まあまあまあまあ、お二人さん、落ち着いて。
       少し冷静に話そうじゃないか」

赤ずきん  「ほら、冷静になりなさいよ、年増のメス豚」

ママン婆  「その汚い口をとじなさい、ひとりよがりの小便くさいクソガキ!」

三太郎   「ほら喧嘩はそこまでだ。
       おいらはサンタだ。でも、今日は一応猟師ってことで呼ばれてる。
       本来だったら、あんたら二人を食べて腹いっぱいになって寝入ったオオカミを退治する役目だ。
       けど……あんたら二人とも、オオカミを我が物にしようとしてる。
       それじゃあ話は成り立たないんだ」

赤ずきん  「サンタは子供の味方よね? 子供が欲しいものをくれるんでしょう?
       あたしはオオカミが欲しいの。可愛がるからお願い!」

三太郎   「お嬢ちゃん。サンタはな、いい子のところにしかこないんだよ」

赤ずきん  「なっ!? あたしがいい子じゃないっていうの!?
       ひっどおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!!!!」

ママン婆  「おほほほほほほほ!!!!!!
       いい気味ね! オオカミは私のものよ!!!!!」

三太郎   「母ちゃん、それも違う。あんた、本当はわかってんだろう?
       人は誰のものでもない。
       子供も、恋人も、モノなんかじゃない。それぞれ意思がある、違う人間なんだ。
       自分の思うとおりになにもかもなるわけじゃあねぇんだよ……」

ママン婆  「……そ、それは……」

オオカミ  「三太郎さん……」

三太郎   「オオカミさんも、気が弱いのは仕方ねぇが、もうちっとしっかりしねぇとな。
       びしっとキメるところはキメねぇと、男がすたるぜ?」

オオカミ  「は、はい……」

三太郎   「女二人を泣かせたくないからっつって、どっちにもいい顔するんじゃあねえぞ?
       こればっかりは、しようがねぇんだ。
       さあ、あんたはどうするんだい?」

オオカミ  「僕、僕は……」

赤ずきん  「オオカミっ……」

ママン婆  「オオカミ様っ……」

三太郎   「さあ! 貴方の! お気持ちは! どっち!!?!!??!?」

語り手   「ここまでいい感じにまとめておいて関口宏ちらつかせないでいただけますかね」

三太郎   「え? 何か問題があるかい?」

語り手   「いや、その。空気が壊れるといいますかその……」

三太郎   「語り手を放棄したあんたには言われたくないね」

語り手   「うっ! ……す、すいません」

オオカミ  「僕っ、一生ついていきます!!! ……三太郎さん!!!!!!!!!!!」

赤ずきん  「え」

ママン婆  「え」

語り手   「イマナニカキコエタ」

オオカミ  「僕の気持ち受け取ってください、三太郎さん!!!!!!!!!!」

三太郎   「……おいらああああああああ!?!?!?」

オオカミ  「穢れてしまった僕じゃ、だめですか……?」

三太郎   「えっいやその、だめっていうか、えっと……どうすればいいんでぇえ!?」

赤ずきん  「……知らない」

ママン婆  「……勝手になさったら」

三太郎   「あれっ。二人ともさっきまであんだけオオカミオオカミ言ってたのに!!!」

赤ずきん  「だってもう結論出ちゃったし」

ママン婆  「それ以上あがいてみっともない真似をさらすなど女の風上にもおけません」

赤ずきん  「引き際が肝心って言うじゃない」

ママン婆  「そのとおりよ赤ずきん」

オオカミ  「三太郎さん!! 心を込めて歌います、聞いてください!
       ♪美しい人生よおおおおおおおおおお限りない喜びよおおおおおおおおおおお
       この胸のときめきをおおおおおおおおお
       あああああああなああああたにいいいいいいいいいいいいい♪」(松崎しげる 愛のメモリー サビ)

三太郎   「さすがにそのときめきは受け取れねぇよう!!!」

ママン婆  「まさか、しげるとは思わなかったわ」

赤ずきん  「しげってるーしげってるーぅ!」

語り手   「わたくし、悟りました。
       えー、諦めれば、勝手に物語は終わるのだと。
       ……こうして、赤ずきんとママン婆はこれからも仲良く暮らすのでした。めでたしめでたし。
       あ。そういえば、なんでサンタの貴方がこの童話にいたんです?」

三太郎   「いやぁ、赤ずきんって言うからには、赤が大層似合う別嬪さんだと思ってね。
       おいらだって、嫁さんもらいたいじゃないか」

語り手   「くっだらない。大した理由はなかったんですね?」

三太郎   「いい嫁をもらうことで仕事もはかどるってもんよ!
       嫁探しは、サンタにとっては重大なことなんだ!」

オオカミ  「はいはいはーい! 僕がなります! 僕がお嫁さんになりまーーーっす!!!」

三太郎   「ひえっ!?!? かかか勘弁してくれえええええええええええええ」








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