罰ゲームは計画的に

作:早川ふう / 所要時間10分 / 2:0

利用規約はこちら。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2021.05.14


【登場人物紹介】

長谷川奏太(はせがわ かなた)

 高校三年生。
 周囲には隠しているが、恋愛対象が男性のみだという自覚はある。
 ずっと有起哉に片思いをしており、告白してOKの返事をもらえたが、
 有起哉の噂と本性を知り、遊ばれていたのだとわかり即破局。
 その後は微妙な友達関係が続いている。
 真面目で堅物思考。


本庄有起哉(ほんじょう ゆきや)

 高校三年生。
 奔放な性格で周囲にもゲイだとオープンにしている。
 ハッテン場の常連だとか経験豊富だとか
 男を切らしたことがない、などの噂が多く、ほぼ事実である。
 周囲に何を言われているかわかっていないわけではないが、気にしない。
 明るい性格で、人懐っこく、可愛らしい。



【配役表】

奏太・・・
有起哉・・・



奏太  「罰ゲームって、普通パンやジュースを買ってくるとか
     そういうんだと思ってたんだけど。
     ……俺が膝枕してやって、それでいいわけ?」

有起哉 「うん。嬉しいけど?」

奏太  「……嬉しい理由がわからない」

有起哉 「何で?」

奏太  「普通こういうのはさ、身体の柔らかいっていうとあれだけど、
     女の子にしてもらうから価値があるんじゃないのか?
     大体男の硬い足は膝枕には不向きだと思うぞ」

有起哉 「いーんだよ、これで。てか俺、女の子なんか絶対無理。
     死んでもされたくないんですけど」

奏太  「あー、そっか、確かにな」

有起哉 「でもこれは違うよ。
     性別がどうとかって話じゃなくて、奏太だから嬉しいってことだから」

奏太  「ふぅん……」

有起哉 「奏太の前だから、こうやってリラックスできる。
     それに奏太は優しいから、俺が甘えるの許してくれるし」

奏太  「……まぁ、これくらいなら」

有起哉 「すごく楽っていうか、安らぐっていうか……。
     俺、奏太といるのすごく好きだよ」

奏太  「……そ、そっか。それは、嬉しい」

有起哉 「奏太は俺と一緒にいるの、どう?」

奏太  「……まぁ……楽しい、かな」

有起哉 「楽しい?」

奏太  「俺あんまり話すの得意じゃないけど、有起哉は遮ったりしないし、
     にこにこ聞いてくれて、ありがたいと思ってるし、
     だから、うん。……楽しいんだよ」

有起哉 「照れる。すごく照れるよそれ……うわー……」

奏太  「……可愛いな」

有起哉 「えっ?」

奏太  「あ、ごめん、いや、違う、えっと、つい」

有起哉 「俺、可愛かった?」

奏太  「う、うん。照れてるの、可愛かったよ」

有起哉 「んふふ、嬉しい」

奏太  「……何だよ、今日やけに……何ていうか……調子狂うよこういうの」

有起哉 「俺何かおかしい?」

奏太  「何でかわからないけど、どきどきしてくる」

有起哉 「それはー、……んふふ、ごめん、俺のせいかな?」

奏太  「やっぱ有起哉が何かしてんの?」

有起哉 「んー……、俺が、奏太のことすごく可愛いなあって思ってるから、かな」

奏太  「は? 俺が可愛い?」

有起哉 「うん。色々いけないこととか教えたくなっちゃう」

奏太  「いけないことって……」

有起哉 「誘惑的なサムシング」

奏太  「誘惑って」

有起哉 「俺が奏太のことそういう目で見ちゃってるってことだよ」

奏太  「それ、マジで言ってる?」

有起哉 「マジですマジです。
     だって、奏太は俺のこと大好きだもんね?」

奏太  「すっ好きなわけないだろ!」

有起哉 「だって、好きじゃなかったら膝枕なんかしないでしょ、男同士で」

奏太  「罰ゲームって言うからしたんだよ!」

有起哉 「えー。ほんとにそれだけー?」

奏太  「……それだけ、だよ」

有起哉 「……ふぅん」

奏太  「俺以外にさ、こ、こういうのやめろよな。勘違い、するから」

有起哉 「勘違いって?」

奏太  「だから……その、距離が近いっていうか、何ていうか。
     友達、じゃない、って錯覚しちゃうっていうか」

有起哉 「俺たち、友達じゃないの?」

奏太  「いや、友達だけど! そうじゃなくて!
     ……あーもう、何でもない、忘れて」

有起哉 「んふふ、可愛いなあ」

奏太  「わけわかんねぇ」

有起哉 「じゃあ奏太。じゃんけんしよっか」

奏太  「は? また負けたら罰ゲーム?」

有起哉 「そう」

奏太  「そういうのもう嫌だよ」

有起哉 「出っさなっきゃ負けよ、じゃんけんぽん! はい奏太負けー」

奏太  「俺は嫌だって言った!」

有起哉 「奏太くんの、甘い口説き文句まで、3、2、1、どうぞ!」

奏太  「口説き文句!?」

有起哉 「甘い台詞だよ。ほら! 言って!」

奏太  「はあ!? 言うわけないだろう!?」

有起哉 「罰ゲームです。言って!」

奏太  「横暴だ」

有起哉 「ちょっと言うだけじゃん、簡単でしょ?」

奏太  「有起哉さ、それわざと言ってる?」

有起哉 「……さあ、どうでしょう」

奏太  「言わせてどーすんの。俺期待しちゃうよ?」

有起哉 「すればいいじゃん。こっちだって誘惑してるんだよ?」

奏太  「有起、哉……」

有起哉 「なあんてね」

奏太  「……ひどいな」

有起哉 「嘘。怒った?」

奏太  「怒った」

有起哉 「ごめん」

奏太  「許さない」

有起哉 「冗談言いたかっただけっていうか、
     奏太が可愛いからテンションあがっちゃったの。許して」

奏太  「……可愛いってなんだよ」

有起哉 「奏太が俺だけに可愛いところ見せてくれてるの嬉しい」

奏太  「嬉しい、の?」

有起哉 「うん」

奏太  「俺で、いいの?」

有起哉 「奏太がいいから、誘惑してる」

奏太  「俺も、……有起哉がいいから……もっと誘惑して」

有起哉 「奏太……」

奏太  「…………(手をパンと叩いて)終了ーーー」

有起哉 「あああああああ甘い台詞終わっちゃったああああああああああ」

奏太  「なんでこういうの、やらせるわけ?」

有起哉 「だって、ときめきが欲しいんだもん」

奏太  「って言うくせに、俺より有起哉の方が甘い台詞になってなかったか?」

有起哉 「シチュエーション大事でしょう!?
     もう全力で楽しんじゃった!」

奏太  「そうか、楽しかったならよかったな」

有起哉 「うんっもう最高!」

奏太  「どうせ男なら誰でもいいんだろ」

有起哉 「えーそんなことないよー好みだってあるよー」

奏太  「お前の好みってわかんねぇけどな」

有起哉 「そう?」

奏太  「だってお前のこと迎えにくる男何人か知ってるけど、タイプ全然違くないか」

有起哉 「みんな優しくて、ちょっと可愛い」

奏太  「……優しくしてくれて少し可愛ければ誰でもいいってことじゃないか」

有起哉 「あーでも身体の相性は大事だよ、じゃなきゃ続かないもん」

奏太  「身体の相性って……」

有起哉 「セックス」

奏太  「セッ……、…………、お前、高校生でこれってやばくね」

有起哉 「やばくないですー、欲望に正直なだけですー」

奏太  「……お前と付き合う男の気が知れないわ」

有起哉 「あれぇ? 奏太だって一応元彼じゃん」

奏太  「あれをカウントするんじゃねぇ。
     錯覚だ錯覚。お前がそんなんだから俺もおかしくなったんだろう。
     大体一週間で別れただろうが」

有起哉 「奏太だったらいつでも元鞘ウェルカムだよ」

奏太  「死んでもごめんだ」

有起哉 「ひどーい。あんな濃厚なキスした仲なのにー!」

奏太  「キスしかしてねぇだろ!
     ……あれこそ罰ゲームだったんだ、そうに違いない」

有起哉 「……嫌だった?」

奏太  「黒歴史すぎて吐き気がする」

有起哉 「んふふ、そっか」

奏太  「……気をつけろよ。このままじゃ、いつか刺されるからな」

有起哉 「奏太になら刺されてもいいかなあ」

奏太  「アホ言え」

有起哉 「奏太が看取ってくれるなんて超幸せだもん。
     だからずっとそばにいてねっ」

奏太  「まぁ、卒業まではな」

有起哉 「えー大学でも構ってよ」

奏太  「大学? ま、まさか有起哉……」

有起哉 「一緒の大学、合格しちゃったもんね。学部は違うけどさっ」

奏太  「ああああ……」

有起哉 「四月から楽しみだねぇ」

奏太  「うるさい黙れ」

有起哉 「うるさくないです黙りませーん」

奏太  「この野郎……」

有起哉 「わーこわーい」

奏太  「……罰ゲームにしては過酷すぎないかッ……」

有起哉 「えー……同じ大学なの、そんなに嫌?」

奏太  「同じ大学なのは別にいいけど、男関係の修羅場に巻き込むのだけはやめてほしい!」

有起哉 「そっか! 大丈夫だよ~。
     ラブラブハッピーキャンパスライフ! よろしくね奏太っ」

奏太  「……激しく、不安だ……」



有起哉  大学入学を機に一人暮らしを始めた奏太のアパートに入り浸り、
     なし崩し的に身体の関係になったのはまた別の話。

奏太   有起哉との縁がある限り、俺はまともな恋はできないだろう。
     アホだよな、俺。
     俺だけを見てくれるヤツを、好きになれたらよかったのに……。





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