火曜日は友達の日

作:夢乃まり・早川ふう / 所要時間 20分 / 比率 0:2

利用規約はこちら。コラボレーション台本についての項目が適用されます。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。2020.01.02
Twitterのハッシュタグから生まれた夢乃まりさんとのコラボレーション台本です。


【登場人物紹介】

飛鳥
  高校生 千鶴とは小学校が一緒 中学は別で高校で再会した

千鶴
  高校生 飛鳥とは小学校が一緒 中学は別で高校で再会した


【配役表】

飛鳥・・・
千鶴・・・




(休み時間)

飛鳥 「次何だっけ? 地理かー、だるいー」

千鶴 「あの先生話長いのうざいよね」

飛鳥 「うんうん。あ、授業中さあ、手紙書いてまわすね」

千鶴 「わかった、私も返事書く!」


(授業中)

飛鳥 『ちーちゃんへ
    ねえねえ先生のズボンの左足見た? ウケるから見て』

千鶴 『飛鳥へ
    見た! なにあれ! 片足だけズボン長い!』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    裾上げてたのとれちゃったんだね、かわいそー!』

千鶴 『飛鳥へ
    足短いし、縫ってくれる人もいないし?』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    笑わせないでよ 声出ちゃったじゃん』

千鶴 『飛鳥へ
    ごめん〜 あー板書見づらいー』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    字下手すぎだよね
    背だけ高くてもあれじゃーねー』

千鶴 『飛鳥へ
    その役に立たない身長、私にわけてほしいわマジで』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    来年あたりに伸びるんじゃない? まだうちら若いし』

千鶴 『飛鳥へ
    だといいけど。
    パンツとかスカートの丈が綺麗なシルエットにならないのつらいんだよね』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    私はちーちゃんくらいってカワイイって思うけど、服選びが大変なのかー』

千鶴 『飛鳥へ
    女子は背が低くても可愛いからいいじゃんとか言われるけど、つらいからマジって思う』

飛鳥 『ちーちゃんへ
    可愛ければいいの、ちーちゃんは可愛いって!』

千鶴 『飛鳥へ
    ありがとー!!』


飛鳥  ちーちゃんとは、小学校が一緒で、中学は学区が違った。
    中学で仲が良かった子は、違う高校に行ってしまったから、
    高校でちーちゃんと再会した時、とても嬉しかったんだ。
    授業中のこんな手紙のやりとり、お昼を一緒に食べたり、放課後遊んだり。
    ちーちゃんのおかげで、毎日が楽しい。

千鶴  飛鳥とは、小学校が一緒で、中学は別々だった。
    小学校では何回か同じクラスだったけど、そこまで仲良かったわけじゃない。
    でも、見知った顔が誰もいないこの高校で、
    飛鳥と再会できて、仲良くしていられるのは素直に嬉しい。
    飛鳥のおかげで、毎日が楽しい。


(休み時間)

飛鳥 「ねえねえ、今日放課後クレープ食べに行かない?」

千鶴 「あ、ごめん、今日は早く帰らないといけないんだ」

飛鳥 「何かあるの?」

千鶴 「バイトしようと思って。今日面接行くの」

飛鳥 「そうなんだ、どこ?」

千鶴 「駅ナカのコーヒーショップ」

飛鳥 「あー、あそこかあ。煙草くさくない?」

千鶴 「喫煙スペースはそうだろうけど」

飛鳥 「でも制服可愛いよね、ちーちゃんに似合いそう!」

千鶴 「あれだったら私の身長でもいけるんじゃないかと思って!」

飛鳥 「あはは! きっとカワイイよー!
    あそこケーキとかもあったよね、ちーちゃん働いたら絶対行くからー!」

千鶴 「うん! 採用してもらえるように頑張る〜」



飛鳥  うちの高校は、別にバイト禁止ってわけじゃないし、やってる子はたくさんいた。
    ちーちゃんも、バイトをする、それは特別なことじゃない。
    でも、今までずっと放課後も一緒にいたけど、これからは違くなってしまうんだ。



千鶴  「本間千鶴です。部活は高校ではやっていなくて……中学ではバレーでした。
     ……はい、土日も大丈夫です、シフト入れます。
     バイトは初めてで……あ、でも頑張りますのでっ……
     あ、笑顔で話すの得意です、はいっ……はいっ、よろしくお願いしますっ」



(数日後)


飛鳥 「ねぇ、ちーちゃん、今日カラオケ行かない?」

千鶴 「あ、今日バイトの日なんだー」

飛鳥 「そっかー。じゃあしょうがないね」

千鶴 「ごめん」

飛鳥 「バイトの曜日とか決まってるの?」

千鶴 「曜日は決まってないよー。
    シフトの希望出して、大体その通りに入れてくれる」

飛鳥 「ふーん……じゃぁ、今日さ、ちーちゃんの働いてるとこ見に行っちゃおうかな!」

千鶴 「お! 来てくれるの?
    今ね、季節のフルーツケーキってやつが美味しいよ!」

飛鳥 「じゃあ今日それにしよ〜っと」

千鶴 「飛鳥絶対好きだと思う」

飛鳥 「そっか楽しみ! バイトはどう? だいぶ慣れた?」

千鶴 「うん! まだ失敗もしちゃうけど、みんな優しく教えてくれるし、楽しいよ」

飛鳥 「そうなんだ。そういうのいいね」

千鶴 「面白い先輩がいて、笑わせてきたりするの。そういうのは困っちゃうけどね」

飛鳥 「ほんと楽しそうだね。……私も働こうかな」

千鶴 「あー、今高校生枠締め切っちゃってた気がする。もう一人いいか店長に聞いてみるよ」

飛鳥 「だったらいいよ、無理言うの悪いし」

千鶴 「でも私も飛鳥と働きたいー」

飛鳥 「どっか探そうかなあ。制服可愛いとこ」

千鶴 「あはは、制服大事だよねー」

飛鳥 「あとあんまり仕事大変じゃないといいなー」

千鶴 「えー、それはどうだろう。結構どこも大変だと思うよー」

飛鳥 「なるべく楽したいじゃん」

千鶴 「お金もらう以上は、お客様からすればみんなプロなんだよ。
    だからそういう考えよくないって、私も先輩から教えてもらったんだけどさ」

飛鳥 「えー説教?」

千鶴 「そういうつもりじゃないよ、でも働くっていうのはそういうことだし」

飛鳥 「うっざ。やっぱ私には向いてないや。ちーちゃんは頑張って」

千鶴 「え、う、うん……」




飛鳥  時間が合わないのはしょうがないと思ってる。
    それは我慢もできた。
    でも。偉そうに説教されたのには……
    正直、なんだよ自分ばっか偉そうにって、思ったよね。



千鶴 「いらっしゃいませー! ご注文をどうぞ! 
    はい、季節のフルーツケーキセットですね!
    お飲み物をこちらからお選びください。
    ホットコーヒーですね、かしこまりました!
    ご用意いたします、少々お待ちくださいませ」



飛鳥  だから。私は、部活に入ることにしたんだ。
    ちーちゃんが飲食で働くなら、私もその時間で、
    ちーちゃんにはできないことをやろう。
    働くってこういうことだって言うんだったら、
    私は、実際社会に出る時に役立つものを手に入れればいい。



千鶴 「おはよう飛鳥! 今日さ、クレープ食べに行かない?」

飛鳥 「ごめん、今日部活ー」

千鶴 「部活?」

飛鳥 「うん、最近始めたんだ」

千鶴 「そうなんだ、えー、何部?」

飛鳥 「パソコン部」

千鶴 「凄い! パソコンって覚えるの大変そうだよね!」

飛鳥 「そうでもないよ。
    覚えることは多いけど、社会に出る上で必須項目だし、頑張っちゃうよねー」

千鶴 「パソコンかぁ。私はまだあんまり触ってないなー」

飛鳥 「スマホかタブレットあればパソコンいらないもんねー。
    でも、それでパソコンできる人減ってるみたいなんだよ。
    だったら社会に出た時の為に、今私が頑張ろうかなーと思ってさ」

千鶴 「すごーいえらーい!」

飛鳥 「そうでもないよ〜」

千鶴 「じゃあクレープはまた今度だね」

飛鳥 「そうだね、今度資格の試験があって忙しいから、終わったら行こう」

千鶴 「わかった! 合格祝いしよ!」

飛鳥 「そうできるように頑張る〜」

千鶴 「頑張れ〜!」



(翌月)


飛鳥 「ちーちゃん、最近リップしてるよね」

千鶴 「え、うん。目立つかな?」

飛鳥 「んー、それくらいなら大丈夫だと思うよ」

千鶴 「よかった」

飛鳥 「でも、眉毛も整えて、雰囲気すごく変わったよ、何かあった?」

千鶴 「実はちょっと前に彼氏が出来てさ。少しはおしゃれしなきゃって思ってね」

飛鳥 「えー、何ーすぐ言ってよーー」

千鶴 「ごめーん」

飛鳥 「そっかーついにちーちゃんにも男が出来たかー」

千鶴 「えへへ……」

飛鳥 「彼氏かー。どう? 上手くいってるの?」

千鶴 「んー。上手くかどうかはわからないけど……うん(照れる)」

飛鳥 「どんな人ー? どこで知り合ったの?」

千鶴 「バイト先の先輩だよ」

飛鳥 「あ。笑わせてくる先輩がいるとか言ってたよね」

千鶴 「そう! その先輩なの!」

飛鳥 「へー。年上?」

千鶴 「うん、大学生だよ」

飛鳥 「そうなんだ。えーデートとかしたの?」

千鶴 「バイト終わりに送ってくれたりとか、ちょっと買い物に行ったくらいかな。
    お金溜まったら遊びに行こうって言ってるんだけど」

飛鳥 「へー。そっかー、まぁ大学生ならそんなもんだよねー」

千鶴 「えー、そんなもんって何ー」

飛鳥 「いやほら、何か奢ってもらったりとか、そういうのできないよねってだけ」

千鶴 「うーん……奢ってもらうってのは好きじゃないなー」

飛鳥 「そっか。でもまぁいいんじゃない、バイトも彼氏と一緒ならより楽しいだろうし」

千鶴 「一緒に入れる日にシフト希望出したりしてるんだ」

飛鳥 「え〜ナニソレ、それって店に迷惑かかんないのー?」

千鶴 「全部がそれってわけじゃないし、一緒じゃない日も働いてるよ」

飛鳥 「ふーん」

千鶴 「なんか、ちょっと、……なんていうか。
    私何か飛鳥の気に障るようなことしたかな」

飛鳥 「え? なんで?」

千鶴 「なんとなく……」

飛鳥 「なんとなくでそんなこと言わないでよ、傷つくじゃーん」

千鶴 「ごめん」

飛鳥 「彼氏と付き合いたてなら、予定そっち優先したいよね?」

千鶴 「え?」

飛鳥 「ほら、合格祝いにクレープ食べに行くって言ってたじゃん?」

千鶴 「もしかして、合格? 資格とれたの?」

飛鳥 「まぁね! っていっても三級だけどさ」

千鶴 「すごーい! おめでとう!! じゃあお祝いに奢るよ!!」

飛鳥 「えー、それはいいよ、だって、奢るとかキライなんでしょ?」

千鶴 「でもお祝いだし……」

飛鳥 「じゃあ、いつあいてる? 私は火曜日以外は部活なんだけど」

千鶴 「あ……火曜日は彼が一限しかない日だから、今月全部バイト入れちゃってて」

飛鳥 「……しょうがないね、また今度かな」

千鶴 「ごめん、約束してたのに」

飛鳥 「別にいいよ、彼氏と仲良くしなー」

千鶴 「ごめん……あ。来月の第一火曜日にどう? シフトまだ出してないからさ」

飛鳥 「えー……でも彼氏に悪いんじゃないの?」

千鶴 「前もって言っておけば大丈夫だよ! ね? クレープ食べに行こ!」

飛鳥 「なんか私に合わせてもらっちゃったみたい」

千鶴 「飛鳥のお祝いなんだからっ! いいのっ!」

飛鳥 「そう? わかった、楽しみにしてる」



千鶴  私がバイトを始めてから、飛鳥は少し変わったような気がする。
    もしかして……飛鳥は寂しかったのかな?
    それまで毎日のように二人で遊んでたのに、
    私がバイトと彼氏ばっかりになっちゃってたもんね……

飛鳥  ちーちゃんは、バイトを始めてから、だいぶ変わったなあと思う。
    遊ぶよりバイトを優先すること、友達より彼氏を優先すること、
    それはたぶん、おかしくない。
    でも……やっぱりおかしくなったと思うから。

千鶴  それとも……私が変わったのかな。

飛鳥  それとも……私が変わったのかな。



千鶴 「あぁ〜 久しぶりだから何食べようか迷う! 飛鳥は決まった?」

飛鳥 「私はバナナカスタード!」

千鶴 「即決だねー」

飛鳥 「そりゃぁ、食べたかったからさっ!」

千鶴 「そっか! じゃぁ私はいつものツナマヨ〜!」

飛鳥 「ホント好きだねそれ」

千鶴 「だって美味しいんだもん。あ、お会計は一緒で!」

飛鳥 「いいよ、自分で払うから」

千鶴 「いいの! 飛鳥のお祝いなんだから! あっちで待っててっ」

飛鳥 「じゃぁ、ありがたくー」

千鶴 「うん! ……2千円でお願いします。はい、はーい。
    飛鳥、はい、バナナカスタード!
    資格合格おめでとう!」
    
飛鳥 「おっ、ありがとう」

千鶴 「じゃぁ、クレープで乾杯!」

飛鳥 「なにそれー。まぁいっか、乾杯」

千鶴 「(一口食べて)美味しー!」

飛鳥 「そっちのも一口ちょうだいっ」

千鶴 「いいよー。はい。あ、私にもちょうだい」

飛鳥 「はいはい」

千鶴 「(一口食べて)……美味しい!」

飛鳥 「(一口食べて)……うまー!」

千鶴 「今度は私もバナナカスタード頼もうっと」

飛鳥 「お気に召しましたか〜」

千鶴 「うんっ」

飛鳥 「ツナマヨも美味しいよ。
    あ、でもこれに目玉焼き乗っけたくなっちゃうけど」

千鶴 「わかるー! トッピングできたらいいのにね」

飛鳥 「あのシナモンのやつも気になってるんだよね」

千鶴 「飛鳥シナモン好きなんだっけ? 私苦手なのー」

飛鳥 「そっか。私今度アップルシナモンシュガー頼んでみようかなー」

千鶴 「今まで食べたことのないやつチャレンジするのもアリだよね」

飛鳥 「そうそう、そうやって世界は広がっていくんだし」

千鶴 「飛鳥いいこと言うー!」

飛鳥 「ふふふ」

千鶴 「もーすぐテストだね」

飛鳥 「あーそうだねー」

千鶴 「勉強してる?」

飛鳥 「してるよ」

千鶴 「えー、そうなんだー」

飛鳥 「そっちは? バイトばっか?」

千鶴 「だって疲れちゃうんだもん、勉強する気にならなくて」

飛鳥 「だめだよそれじゃあ。今のバイト先に就職するわけじゃないんだからさ」

千鶴 「そうだけどー」

飛鳥 「テスト終わったらまた食べに来ようよ。お疲れ様会」

千鶴 「いいね!」

飛鳥 「クレープの為にテストも頑張る、勉強も頑張る、OK?」

千鶴 「オッケー!!」

飛鳥 「また火曜日に予定合わせられる?」

千鶴 「うん、大丈夫!」

飛鳥 「そっか、ありがと」

千鶴 「四日の火曜でいいかな、テスト返しだけだし、お昼で終わるよ」

飛鳥 「あ、じゃあカラオケも行っちゃう?」

千鶴 「行く行く!」

飛鳥 「四日ね、スケジュール入れとく」

千鶴 「うんっ、私もバイト休みって言っとくね」

飛鳥 「彼氏にも言っておきなよ?」

千鶴 「あはは、うん、わかった」

飛鳥 「約束したからねー?」



千鶴  見知った顔が誰もいないこの高校で、
    飛鳥と再会できて、仲良くできたのは、素直に嬉しかったんだ。
    飛鳥のおかげで、毎日が楽しかった。
    今は他に楽しいこともたくさんあるけど、やっぱり飛鳥は特別だと思う。

飛鳥  中学で仲が良かった子は、違う高校に行ってしまったから、
    高校でちーちゃんと再会した時、とても嬉しかったんだ。
    ちーちゃんのおかげで、毎日が楽しかった。
    今は、少しだけ変わってしまった。
    それは、それだけ彼女が特別だったからだと思う。

千鶴  私は少しだけ嫌な子になったと思う。
    でも、友達とも彼氏とも仲良くしていける私でありたい。

飛鳥  私は少しだけ嫌な子になったと思う。
    でも、目標もできたし、今の自分が嫌いじゃない。



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